検索窓
今日:9 hit、昨日:25 hit、合計:288,670 hit

Story75:胡蝶side ページ32

洗濯物を洗濯機に入れて、回す。使い方は初めてここに来た時に一応教えて貰ってはいたけれど、釦を1つ押すだけであとは機械がやってくれるというのは、どうにも慣れない。この洗濯機もそうだけれど、電子レンジや電気ケトルなどもだ。Aさんによれば相沢家は鍋で炊いた米が好きだったから無いだけで、世の中釦1つでお米を自動で炊いてくれるすいはんきとやらもあるという。

時代の流れ、世界の異なりというものをますます感じるものだ。


「はい、胡蝶さん。僕の隊服、持ってきたよ」
「ありがとうございます、時透くん」


元いた世界を感じさせてくれるものは、自分たちの身体や記憶以外には、身につけてきた隊服と日輪刀だけ。


「時透くん、本当にいいのですか?」
「うん、いいよ。Aにも言った通り」
「ですが……」


多分、Aさんが確認したのは、私と同じ理由だ。思い出になるかもしれないものを、壊す可能性。あの人はそういう人だと、この1週間でよくわかった。私が使わせてもらっている部屋にも、思い出の品だろうものが溢れている。家族写真に加え、それに写っているものと同じ塔の模型だったり、使い込まれたカバンだったり。思い出を大事にする家族に囲まれて生きていたなら、そういう人間に育ってもおかしくはない。


「まぁ、言いたいことは分かるけど…」


時透くんだって、記憶が戻ってからの短い間、竈門くんたちと仲良さそうにしていた。例え1度死んだ身だったとしても、いま、その思い出を大事にしたってバチは当たらない。私はそう思ったのだけれど。


「僕、もう帰る気ないから」
「……え?」
「死んだ時、兄さんに会えた。僕に幸せになって欲しかったって、言ってたよ。だから僕は答えた。僕は幸せになるために生まれてきたんだ、仲間のために死んで後悔はない。…それでも生きていて欲しかったって、兄さんが泣きながら言うんだ」


ぐっと隊服を握りしめた時透くんが、その時私に初めて微笑みかけた。


「だからね、胡蝶さん。僕はこれを、今を、兄さんがくれた機会なんだって、そう思うことにしたんだ。ここで僕は、生きていく。いつかいきなり戻っちゃうかもしれないけど、それまで後悔しないように。……思い出は、ちゃんとあるよ。だから、大丈夫」
「…そうですか。君は強いですね」
「霞柱だからね」


(彼の隊服を受け取る)
(軽いはずのそれに重みを感じたのは)
(錯覚では無いはずだ)

Story76→←Story74



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (180 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
281人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , トリップ , 逆ハー
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

灯霧(プロフ) - 絵宙(えそら)さん» ぎゃあ!見つけ次第順次直していきます……!ご指摘、お気遣いありがとうございます!頑張ります! (2020年4月16日 9時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
絵宙(えそら) - 宇髄さんの「ずい」は骨へんですよ〜公式さんも間違えてましたね…w公式さんは少し寝た方が良いと思うんですよ…w天元郎にしちゃってましたし…夜中作業でしたら灯霧さんも寝てくださいね!!! (2020年4月15日 17時) (レス) id: 63faa5bcfc (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 神夜神美さん» ありがとうございます!体調の心配まで……!腰を痛めているなうな私には有難いです!← (2020年2月23日 18時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
神夜神美(プロフ) - すごくおもしろくて最高でした!更新頑張ってくださいね!でもお体にもお気をつけてください!! (2020年2月23日 16時) (レス) id: 0f455588ed (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ももさん» コメントありがとうございます!ぜひぜひ、楽しんで頂けたらなによりです! (2020年2月21日 23時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:灯霧 | 作成日時:2020年2月20日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。