story615 ページ27
飛影の斜め向かいに置かれていた椅子に座って一息ついた後、躯の話は始まった。
「煙鬼の方針には、目を通したか?」
「あぁ、魔界のパトロール隊とか、人間界で悪さをした妖怪たちへの処罰とか、思っていたより詳細まで詰めていたな」
「そのパトロールなんだがな、俺が主に担当することになった」
それ自体は驚かない。移動要塞というのは、パトロールにはとても便利なのだから。所有者が躯である以上彼女に担当の話が行くのは合理的だし、彼女を慕ってついてくる妖怪も多い。パトロール要員には事を欠かないはずだ。
「で、しばらくは飛影を筆頭にパトロールをする。が、そんな事はごめんだと言う奴らも多い」
「だろぉな」
「そっちの処罰は、奇琳に任せる。少なくとも俺の周辺についてはな」
「いいんじゃねぇの」
「そこでだ、俺のところに来た暁には、という事になるが…お前、俺の友になる気は無いか?」
「……は?」
仕事の話をしていたはずなのに、いきなり話題が跳んで涼の目が丸くなる。彼女だけではない、飛影も驚いていたし、他の三人もそうだ。
「まぁ友と言っても、名目上は俺の部下…って事になるか。ただ俺は、お前の行動を制限するつもりは無い。人間界にいようが魔界にいようが、何をしようが何も咎めるつもりもない。…そう考えた時、部下では不便な気がしてな」
「…それで、友?ばっかみてぇ。ダチってぇのはそうやって作るモンじゃなかろうに」
「あいにく俺には、友と呼べる奴があまりに少なかったんでな。作り方を知らん」
不器用な躯の言葉に、苦笑した。気に入った、とか馬が合う、とかそういう事は分かっても、そこから友人関係に発展する方法を知らないから部下として手元に置いて、だが言動を妨げることはしない。そういう方法を選ぶ彼女が、とても彼女らしいと感じたのだ。
「あー…まぁいいや。そういう話なら、私は断る理由もねぇしな。…で、こいつらがいる理由は?」
ティーカップを口につけて一口紅茶を飲む。甘味の強いそれは、疲れた身体に沁み込んでいった。
「奇琳に関しては、顔合わせの意味合いが強いな。飛影はさぞ気になるだろうと思って、俺が呼んだ」
「…ふん。余計な世話だ」
鼻を鳴らす飛影をまぁまぁと手で制して、続きを促す。
「で、時雨と武威についてだが……お前の部下にしようかと思ってな」
「……は?」
(寝耳に水。鳩が豆鉄砲を食ったよう)
(そんなことわざが私の脳裏を右から左に流れていった)
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なむなむ - 更新ありがとうございます。完結が楽しみです! (2017年12月20日 14時) (レス) id: a04af66b4a (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - >コメントいただきました皆様:まとめての返信、ご容赦下さい。おまたせして申し訳ございません。年内にはなんとか完結できるように頑張ります! (2017年12月16日 8時) (レス) id: 4638cf4153 (このIDを非表示/違反報告)
pさん - 完結まで頑張って下さい!! (2017年11月30日 9時) (レス) id: b9986b9fac (このIDを非表示/違反報告)
かなた - はじめまして。私のような者が大変烏滸がましいのですが、楽しく読ませていただいております。更新楽しみにしてます。頑張ってください┏○" (2017年10月27日 0時) (レス) id: 184ad4d852 (このIDを非表示/違反報告)
(*^^*)(プロフ) - どうか完結まで頑張って下さい! (2017年10月23日 19時) (レス) id: 734043d3b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灯霧 | 作成日時:2017年7月20日 16時