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Story94 ページ46

ヨークシンに着くまで、ハイウェイを走らせること四時間ほど。ようやく最寄りのインターを降りて市街地に入った車は、とあるホテルの駐車場で止まった。ホテルのロビーに近づくにつれてボーイがうやうやしく頭を下げるのを横目に、Aとフェイタンは堂々とホテルの中を歩く。


「ルシルフルです」
「お待ちしておりました。二名様一室、エキストラダブルルームでのご案内になります。こちらに記帳をお願いいたします」


フロントスタッフに応えて、Aが宿泊名簿に適当な名前と住所を書いた。フェイタンはつまらなさそうに、その作業を見ている。手続きを終えてルームキーを受け取るAがちらりと彼を見ると、小さく頷いて二人は歩き出した。特に大きな荷物などはない。着替え一式の入っているAのバッグ程度。お持ちします、というボーイを丁寧に断り、二人は部屋へと向かった。


「はぁ、なんか緊張したぁ」
「緊張?」
「ここ、前にマースの用事で来たことあるの。その時は仮面かぶってたし、最低限しかホテルの人と接触なかったけど…ばれたら面倒だなって思って」
「そうか」


ソファに腰を下ろしたフェイタンの横で、Aはベッドにダイブしていた。よっぽど緊張したらしい。そういう神経を持たないフェイタンには、理解のできないものだったが。


(流星街に来てから、どんどん態度が柔らかくなてるね)


そんな彼女を見ながら、思う。A自身はまだ何も思い出していないというが、言動はフェイタンの知るAへとどんどん近づいているような気がした。だからこそ、今回連れ出してみたというのもある。Aの様子を見れば寝っ転がっているのに飽きたようで、備え付けの小さな冷蔵庫を開けていた。


「あ、ねぇねぇ、ビールあるよ。飲む?」
「ああ」


エキストラダブルルーム、というだけの事はあって、この部屋は比較的広い部屋だった。ソファとテーブルも、そこそこの大きさ。冷蔵庫の中身も、単なる茶や水だけではないらしい。缶を二つ持って近寄ってきたAを見上げる。


「はい、これ」


差し出された缶を受け取れば、フェイタンの横にAが腰を下ろした。ぷしゅ、とプルタブを空けて、カンパーイという。


(何に乾杯よ、と突込めば)
(今お酒を飲めることに!と堂々と言い切られて)
(やぱりその姿が)
(昔のAに被る)

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- とても面白いです!つづき楽しみにまってます!頑張ってください、応援してます! (2020年4月6日 12時) (レス) id: 7d54cdb775 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 由宇さん» コメントありがとうございます!ちょいちょい停止しますが必ず書き上げますので、どうぞよろしくお願いいたします! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ここっちさん» もうちょいで記憶が!まだわかりません!(←)でも長い目で見ていただければと思います、よろしくお願いします! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ゆっずーさん» 遅くなりまして申し訳ありません!いつもありがとうございます!これからも頑張りますね! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
由宇 - 面白いです!早く更新停止が終わることを願ってます!頑張ってください! (2018年8月15日 11時) (レス) id: 06761224f9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:灯霧 | 作成日時:2017年7月10日 18時

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