story76 ページ28
なぜ、あんな約束をしたのか。ふと思い出し、フェイタンは礼拝堂を後にした。向かったのは裏手にある、小高い丘。ぎりぎり教会の敷地内ではあるが、流星街のならず者たちなら気にせずに踏み入ってくるような場所で、なぜか人がいることが少ない場所。ゴミだらけの流星街の中で、緑が見られる数少ない場所だった。その場所に来て腰を下ろす。ゴミの腐臭混じりの空気が、鼻孔をくすぐる。
(……こんな日だたか)
自分が彼女の存在に救われたのは。きっと彼女は、そんな自覚なかっただろうけど。
嫌になるほど晴天で暑ささえ覚えた日の真昼間。フェイタンは初めて、その手を汚して人を殺した。返り血をぬぐうことすらせず、むしろその行為によろこびすら覚えた。自分はこちら側の人間なんだと、その時自身の身をもって知った、その日。
「…フェイタン？」
こんな風に声をかけてきた彼女は、いつもの、まるで太陽のような笑顔で彼を灼いた。だがその太陽すら自分のものにしようとして、フェイタンは腕を伸ばす。
「…え、なんで？」
「うるさいよ」
それからの行動は、幼いころと今とでは大きく違った。だが同じようにその太陽を抱きしめる。今は隠れてしまっている笑顔を、腕の中に閉じ込めるように。
「…温かいね」
「そりゃ…生きてますから？」
「なぜ疑問形よ」
「いきなりそんなこと言われて、戸惑わない人がいると思う？っていうかなんで抱きしめられてんの私…」
「いいからそのままでいるよ」
「はいはい…」
警戒するでもなく拒否するでもなく、彼女は子供のころと同じようにおとなしく抱きしめられていた。それどころか小さく笑う声に、フェイタンの目が丸くなる。
『ふふ、フェイタンって甘えん坊だったんだ？』
「意外だな…フェイタン、甘えん坊？」
重なる声、それが彼女の中で重なることはないのだろうけど。
「…ワタシがそれを、知ていればいい」
「はい？」
「なんでもないよ。それより誰が甘えん坊だて？」
顔を上げて噛みつくように口づければ、眉を寄せたAが首を後ろにひっこめた。それを追いかけるフェイタンの額に、彼女の手が当てられる。
「ここ、外」
「外じゃなければいいのか？」
「…そういうわけでもない…かもしれない」
「ハキリするね」
「ソンナコトイワレテモ」
戸惑う彼女は、太陽のような笑顔を浮かべていなくても、姿かたちが変わっても、かつての約束をした愛しい女。
(そしてそれは)
(ワタシとお前だけが知る約束)
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累 - とても面白いです！つづき楽しみにまってます！頑張ってください、応援してます！ (2020年4月6日 12時) (
レス) id: 7d54cdb775 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 由宇さん» コメントありがとうございます！ちょいちょい停止しますが必ず書き上げますので、どうぞよろしくお願いいたします！ (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ここっちさん» もうちょいで記憶が！まだわかりません！（←）でも長い目で見ていただければと思います、よろしくお願いします！ (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ゆっずーさん» 遅くなりまして申し訳ありません！いつもありがとうございます！これからも頑張りますね！ (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
由宇 - 面白いです！早く更新停止が終わることを願ってます！頑張ってください！ (2018年8月15日 11時) (レス) id: 06761224f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灯霧
| 作成日時：2017年7月10日 18時
