story8 ページ10
「つまみの材料は、どうするんだ？食堂の余り物でも貰ってくるのか？」
「は？そんなの勿体ねぇだろ。特にこの酒に余り物じゃな。材料なら持ってきてある。ほれ」
どん、と置かれた麻袋。それを開いて中身を見て、ミケの目がまん丸になった。
「肉…だと…」
「おうよ。しかも牛肉だ。まぁこれは、肉の切り出しをする時に出てくる端っこ、つまり切り落としなんだけどな。これがつまみには最適だ」
「まさか、食糧庫から盗ってきたのか？」
「人聞きの悪いことを言うなよ。肉を調理する時に、切り落としを僕の方へ優先的に回してくれって頼んでるだけさ」
「そういう事を、職権濫用と言うんだぞ…」
「だとしても問題ねぇよ。何せ僕以外のお偉いさんは、肉の塊が食いたいんだから」
屁理屈だ。そう思いながら、開き直っているようにも見えるAに笑ってしまう。彼女と初めて出会った時を、思い出した。
「昔も、似たような事を言っていたな」
「あ？いつの話だ」
「俺とお前が、初めてまともな会話をした時の話だ」
「あぁ…ミケが晩酌に乱入してきた時の話か」
入団した、その日の夜だった。新しい環境にらしくなく緊張し、少しだけ風にあたろうと出た屋上にAがいた。しかも、酒を飲んでいた。気配に気づいていたにも関わらず、我関せずで瓶を煽って。その姿がどこか儚く感じられて、思わず手を伸ばしてしまったのだ。
(空を見上げながら流れた涙に)
(らしくなく胸がときめいたのを覚えている)
(このまま消えてしまいそうだと思わず腕を掴んだら)
(振り向いたAの瞳が濡れていて)
(その時からずっと)
(ずっと…)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 79人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
灯霧(プロフ) - 777さん» 普通のペンだと難しいとおもいますよー。私も姉に投げつけたいww (2015年7月16日 9時) (
レス) id: 3be15bf116 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 南湖さん» 万年筆のようなものを想定しているので、返しは自作でしょうwwありがとうございます！頑張ります！ (2015年7月16日 9時) (レス) id: 3be15bf116 (このIDを非表示/違反報告)
777 - ↓いったい何に使う気ですか;…と言いつつボクも欲しい！弟に投げつけたい！！自分のペンにカエシ付けられるかな… (2015年7月16日 0時) (レス) id: 1bd62eb53b (このIDを非表示/違反報告)
南湖(プロフ) - ペン先に返しがついてるペンってどこに売ってるんでしょう。欲しい← 更新頑張ってください！ (2015年7月15日 22時) (レス) id: 160e01a0b4 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 777さん» 固まらせたかったんです（←草がはえて嬉しい！ (2015年7月14日 23時) (レス) id: 3be15bf116 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：灯霧
| 作成日時：2015年6月27日 8時
