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Story36 ページ37

鬼は、翌々日に現れた。里の中央に立つAと天元が、ふっと顔をあげる。


「地響き。あの時と同じ化け物の音が聞こえる」
「ああ、気配もするね。これは…予想以上に強い鬼のようだ。…天元」
「わかってる」


この戦闘に紛れて、天元たちは里抜けをする予定になっていた。それはもともとこの日に里抜けをする予定だったこともあるが、何より鬼との激しい戦闘になれば、天煌たちも追っ手を出す余裕がないと判断してのことだ。なにせこちらの戦闘は、どの程度被害が出るかわからない。避難した場所から動ける保証も、ないのだから。


「天煌たちに知らせを」
「応!」


しゅ、と影が消えた。ゆっくりと刀を抜いたAが、強い気配のする方をにらみつける。里のはずれ、家畜の間を迫ってくる土煙に向かって、足を開き構えた。


「風の呼吸・壱ノ型」


【塵旋風・削ぎ】


地面を削る斬撃が、土煙に迫る。それが衝突し、強い風が舞った。Aは型を放った身体の向きを変え、じっとその中をにらみつける。

長い髪をあおる風がやんだ時、その姿が見えた。


「ほう、これは強い奴がいたものだ。ついこの間鬼狩りを食ったが、そいつより数段強いな」


ぐっぐ、と喉の奥が抑え込まれているような、耳障りの悪い声音。現れたその姿は、天元より一回り大きな体躯、そしてAの腰ほどもあるような腕が六本生えた、天元の目撃情報通りの鬼だった。大きな口、牙が里に設置された行燈の影に笑う。


「お前を食えば、俺は上弦に入れ替わりの血戦を挑める!」


黄色い目に、『下・弐』の文字。


「…なるほど、下弦の弐か。戊の隊士一人では、ひとたまりもなかっただろうね。…悪いが、彼もしくは彼女の仇をとらせてもらうよ」
「顔も知らぬ、性別もわからぬような輩のためにか!ずいぶんとお人よしだn」

「風の呼吸・弐ノ型」


【爪々・科戸風】


鬼の声を遮り、Aが四つの鋭い斬撃を繰り出した。巨体とは思えない俊敏さで、鬼がそれを躱す。


(さてさて)
(かなり久々の任務だけれど)
(まさか下弦とはねぇ)
(…体がついてくると、いいのだけれど)

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灯霧(プロフ) - 陽さん» コメント、ご指摘ありがとうございます!修正させていただきました!これからも読んでいただけると幸いです! (2021年3月21日 20時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼します。いつも楽しく読ませていただいています。…が、一つご指摘失礼します。宇随、ではなく、宇髄、です。直していただけるとありがたいです…細かいところをすいません。失礼しました (2021年3月21日 19時) (レス) id: 9d67b7c326 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 実弥&サソリLoveさん» コメントありがとうございます!そう言って下さる方がいて控え目に言って最高です。(←)これからも頑張ります! (2020年12月29日 17時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 玄弥さん» コメントありがとうございます!更新不定期でごめんなさい、でも頑張りますので見守っていただけると嬉しいです! (2020年12月29日 17時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - みぃむぅさん» ああ成程!納得!(←) (2020年12月29日 17時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:灯霧 | 作成日時:2020年12月1日 16時

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