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Story32 ページ33

里の中でも一際大きい屋敷。その一室へと案内されたAは、上座で座る一人の男性を見て、微笑む。


「やぁ、久しぶりだね。天煌」
「先ぶれが来た時はなんの悪ふざけかと思ったが…正真正銘の化け物めが」
「まぁ確かに、人のくくりではないだろうけれど」


苦笑に変わった表情をにらみつけるその男性の顔は、嫌悪に歪んでいた。


「最後に会ったのは、君が十かそこらのあたりだったかな」
「…八つのころだ」
「そうかい。大きくなったものだ。今では宇髄の頭領で二児の父親…か」
「生き残った優秀な奴が、二人しかいないだけのこと」
「…なるほど。人を人と思わない宇髄の教えは、変わらぬようだ。君の母親は、宇髄には珍しく子供に愛情を注いでいた女性だったように思うが」
「そのようなこと、覚えてもおらんわ。…さっさと本題に入れ。化け物と交わす世間話など、ない」


まるで刺すような冷たい声音に、Aは表情を無にする。最初に一瞥したあとはこちらを見ようともしない宇髄天煌の前に、正座をした。


「鬼殺隊の隊士が連絡を絶った。それゆえ増援として私が来た。宇髄の里にあっては、これから数日の間、夜間の人出を避けてもらいたい」
「我らは忍、闇に動くもの。そのようなことはできん」
「では無駄に犠牲が出るだけだ。…私個人としては別にかまわないけれど、鬼殺隊とその頭領である産屋敷輝哉様はそうは思わないようでね。ならば一つ、提案をさせておくれ」
「…話だけは聞いてやろう」
「この里で、待ち伏せをさせてもらいたい。鬼は群れない。この里の広さなら、そこそこ戦っても被害は少ないだろう。無論、鬼が出た時には速やかな避難を推奨する。私の戦いの邪魔もしないでほしい。…君たちは場所を提供し、ただ黙って避難してくれれば脅威を払える。それでよいだろう?」


かくん、とAが首を傾げた。そして、笑う。


「なにせ宇髄の里は、五十年前にも鬼の襲撃を受けているのだから。その脅威がわからぬ天煌ではあるまいよ」
「………場所の提供、戦いの邪魔をしない。それだけか」
「ああ、それだけだ」
「よかろう。里には命を出しておく。だが任務は受ける」
「それは好きにするがいい。危険を伝えた以上、あとは頭領である君の裁量だ」


それでは、とAは立ち上がった。


「夜は里にいさせてもらうよ」
「必要以上に歩き回るな」
「ふふ、わかっているさ」


(ひらりと手を振り去っていった彼女を)
(天煌は苦々しげに見送った)

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灯霧(プロフ) - 陽さん» コメント、ご指摘ありがとうございます!修正させていただきました!これからも読んでいただけると幸いです! (2021年3月21日 20時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼します。いつも楽しく読ませていただいています。…が、一つご指摘失礼します。宇随、ではなく、宇髄、です。直していただけるとありがたいです…細かいところをすいません。失礼しました (2021年3月21日 19時) (レス) id: 9d67b7c326 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 実弥&サソリLoveさん» コメントありがとうございます!そう言って下さる方がいて控え目に言って最高です。(←)これからも頑張ります! (2020年12月29日 17時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 玄弥さん» コメントありがとうございます!更新不定期でごめんなさい、でも頑張りますので見守っていただけると嬉しいです! (2020年12月29日 17時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - みぃむぅさん» ああ成程!納得!(←) (2020年12月29日 17時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:灯霧 | 作成日時:2020年12月1日 16時

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