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Story21 ページ22

鬼を倒してさほど時間が経たないうちに、Aが実弥の腕を取る。


「実弥」
「…んですか」
「稀血…というのは、本当かい?」


真剣な顔で尋ねられ、実弥は困惑した。稀血、というもの自体を理解していないのだ。


「…意味がわかんねぇす」
「今まで怪我をした時、鬼がやたらと引き寄せられるように現れたことはあるかい?」
「…まぁ、言われてみれば…」
「もしかしてその血を使って、あえておびき寄せたり…そんなこともしていたのかい?」
「そんなことができるんですか」


さすがにそこまで頭が回っていなかったのか、目を丸くする彼の言葉に、Aは珍しく舌打ちをした。


「…いや、私としたことが慌てているみたいだね。今の発言は忘れておくれ」
「…っす」


忘れはしないが、と心の中でつぶやく。実弥にとって、鬼を狩る手段が増えるのはいいことでしかない。


「とにかく…これは一度、調べてもらった方がいいかもしれない」


呟いたAが、手を叩く。すぐに鴉が舞い降りてきた。


「輝哉様のところに行っておくれ。稀血かどうかを調べる手筈を、整えてほしいと」
「了解シタ!」


バサバサッ!と羽音をさせて飛び立つ鴉を見送るAを見上げ、実弥は問う。


「稀血って…なんですか」
「…文字通り、稀なる血の事だよ。血液にも種類がある。私にはさっぱりわからないが、鬼にとってはそれは人間で言う甘味や塩味などに該当するようでね。その中でも稀血というのは、栄養価が高い。一人喰えば、普通の人間を五十人、百人喰ったと同等の力を得られると言う。…つまり実弥は、鬼にとっては涎がでるほど喰いたい人間、ということだ」
「…つまり俺が狙われやすい?」
「…そう、だね」


つまり、それは。


「じゃぁ…なんだ。お袋やこと、須美、就也、貞子、弘、それに…玄弥は、俺がいたから襲われたのか…?」
「…わからない。稀血については、わかっていないことの方が多いのだよ。遺伝によるものだという確証もないし、そうでないとも限らない」


(その言葉は届いているだろうか)
(これ以上)
(実弥に重荷を背負わせたくないのに)
(現実は、残酷だ)

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灯霧(プロフ) - 陽さん» コメント、ご指摘ありがとうございます!修正させていただきました!これからも読んでいただけると幸いです! (2021年3月21日 20時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼します。いつも楽しく読ませていただいています。…が、一つご指摘失礼します。宇随、ではなく、宇髄、です。直していただけるとありがたいです…細かいところをすいません。失礼しました (2021年3月21日 19時) (レス) id: 9d67b7c326 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 実弥&サソリLoveさん» コメントありがとうございます!そう言って下さる方がいて控え目に言って最高です。(←)これからも頑張ります! (2020年12月29日 17時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 玄弥さん» コメントありがとうございます!更新不定期でごめんなさい、でも頑張りますので見守っていただけると嬉しいです! (2020年12月29日 17時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - みぃむぅさん» ああ成程!納得!(←) (2020年12月29日 17時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:灯霧 | 作成日時:2020年12月1日 16時

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