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Story15 ページ16

結論から言おう。

鞘で繰り出した技でも、実弥はぶっ飛ばされそうになった。


(あり得ねぇ…!)


まるでつむじ風を吹かせたかのような、勢い。地面をえぐるその形を見て、ぞっとする。それをまともに受けたりしたらどうなるか。脆い人間の身体など、肉塊になるしかない。


「今のが、壱の型。比較的遠距離攻撃向きの型かな」


そんな(木の幹に必死にしがみつく)実弥を横に、Aは淡々と玖の型までの型を繰り出して見せた。その度にそのあたりの地形が変わる気がする。


(これを刀なんかで繰り出した日にゃ……)


例えば住宅街で、なんて考えたくない。つまりそう言う事も加味して使う型を決めなければならないのだ。思っていたよりも難易度の高い呼吸に、実弥は頭を悩ませることになる。


抜いた刀を振って型の練習をする実弥を見ながら、Aは煙管を吹かせた。この一年彼に修行をつけ、彼の才能自体はかなりのものだと考えている。きっと実弥なら、風の呼吸を使いこなせるだろう。そう、それこそAを超えた呼吸の使い手になるに違いない。


(…そうなったら、ようやく引退かな)


ふ、と空を見上げる。木々の向こうに飛ぶ鳥が見えた。…あれは、鎹鴉だ。ひゅぅう…とこちらに向かって降下してくる鴉に手を伸ばした。


「カァーッ、カァーッ!御館様カラ文ィー!」
「!?」


突然聞こえた声に、集中していた実弥がびっくぅ!と跳ね上がりこちらを振り返った。思わず、笑ってしまう。


「ふ、ははっ…!なんだい実弥、その驚きようは…!」
「なっ、仕方ねぇだろっ、つかいまの…まさかのその鴉か!?しゃべんのかよ鴉って!?」
「喋ッテ何ガ悪イ!突ッツキ回スゾ!」
「っ、やめっ、ひっかくな突くな!このクソ鴉!」


そのまま実弥の頭にくちばしをガンガンぶつけに行く鴉とそれを防ごうと躍起になる実弥のやり取りに大爆笑しながら、Aは文を開く。内容はまぁ、予想通りと言うか。


「実弥。そのくらいにして…ふはっ」
「笑うんじゃねぇええ!」
「ははっ、すまないすまない。ところで鴉くん。すぐにお伺いする旨をお伝えいただけるかな」
「承知シタ!」


カァーッ!と鳴いて飛んでいく鴉を見送り、Aは実弥の元へと近寄る。


「急だが行くところができた。今日は帰らないから、あまり夜更かししないようにね」


(ふわりと笑う彼女がいない夜)
(そんなの、実は初めての経験だった)

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灯霧(プロフ) - 陽さん» コメント、ご指摘ありがとうございます!修正させていただきました!これからも読んでいただけると幸いです! (2021年3月21日 20時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼します。いつも楽しく読ませていただいています。…が、一つご指摘失礼します。宇随、ではなく、宇髄、です。直していただけるとありがたいです…細かいところをすいません。失礼しました (2021年3月21日 19時) (レス) id: 9d67b7c326 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 実弥&サソリLoveさん» コメントありがとうございます!そう言って下さる方がいて控え目に言って最高です。(←)これからも頑張ります! (2020年12月29日 17時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 玄弥さん» コメントありがとうございます!更新不定期でごめんなさい、でも頑張りますので見守っていただけると嬉しいです! (2020年12月29日 17時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - みぃむぅさん» ああ成程!納得!(←) (2020年12月29日 17時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:灯霧 | 作成日時:2020年12月1日 16時

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