story47 ページ48
「アンタ、寝てないだろ」
数日後の診察でマチに図星をさされ、Aは視線を逸らす。はぁ、と深くため息をついた彼女は、Aの頭を軽く叩いた。
「睡眠は回復力に直結する。ちゃんと寝な」
「…ですよね」
分かっているんだけど、と苦笑するAの包帯を取り払う。胴体はまだだが、とりあえず指先は回復してきていた。剥がされた爪も再生し始めている。彼女の身体を拭いたタオルを洗面器に放り投げた。
「何かあったなら、聞くけど」
それはマチの、精一杯の優しさだ。それが分かるから、Aは曖昧に答えを濁すしかない。
「ちょっとね」
「……そう」
それ以上追求はせず、傷口に薬を塗って新しいガーゼをあて、包帯を巻き直す。しばらく無言で、その作業が繰り返された。
「…終わったよ。それなりに順調に回復してる。化膿や合併症も無さそうだ」
「これだけ安静にしていて、そうじゃなかったら困るよ」
「確かにね。……そうそう、今夜なんだけど」
道具をテキパキと片付けるマチに視線をやると、何故か申し訳なさそうな顔をされる。
「アタシとシズクは、蜘蛛とは別件で仕事があってここを留守にするんだ」
「…パクノダは、確か明日にならないと帰らないんじゃなかった？」
「そう。…で、アンタの世話は自分でも出来るだろうから、まぁいいとして。問題は、ここに残るメンバーが料理を全くできないって事なんだけど」
「……参考までに、誰が残る？」
「ウヴォーとノブナガ、フィンクスにフェイタン」
「前三人は納得だけど…フェイタンも料理できない？手先器用そうだけど」
「出来ないというより、出来るからアレンジし過ぎて食えないものを作る天才」
レシピ通りに作ればいいのに、とため息をつく彼女に、Aもため息をついてしまった。
「つまり、五人分の夕飯を作れと」
「本来なら怪我人のアンタに労働はさせたくないんだけどね。まぁ、リハビリと思って」
「…りょーかい。まぁそのくらいなら何とかなる」
こうして、Aの一日コックが決まった。
(あ、ちなみに量は十人前じゃ足らないから)
(……何人分が目安？)
(あの四人なら、ざっと二十人前くらいかな)
(………無理でしょ、それ…)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 45人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：灯霧
| 作成日時：2017年6月25日 15時
