story45 ページ46
味方なのかそうでないのか。それはAや幻影旅団のような裏社会を生きるものにとって重要な事だ。
「俺はAさえ良ければすぐにでも、味方になりたいと思っているんだけどな」
「私が蜘蛛に入らない…もしくは協力しなければ、殺すつもりのクセに」
Aの言葉遣いが多少ツンケンしたものになるのも、仕方がない。彼女は信頼が仇になる世界で生きてきたのだ。マース組での彼女の立ち位置は、あくまで道具。使い勝手の良い道具を裏切る人間の方が珍しい。そして幻影旅団では、Aを『人』として見ている。少なくとも、昔のAを知る者たちは。
「人は人を裏切る。そうやって、勝ち残ってきた。…アンタらが違うと、どうやって証明する？」
「…難しいな。だが、俺達の行動原理は至極単純だ。欲しいものは奪い取る。邪魔するものは皆殺し。旅団の存続を第一にする」
最後の言葉に、Aは首を傾げた。力がすべてと言わんばかりの彼らの行動理念からは、逸脱したようなものに思えたから。それを理解しているのだろう。クロロは静かに、言葉を紡ぐ。
「奪い取るには力が必要だ。邪魔するものを皆殺しにするにも。それは単純に戦う力だけじゃない。シャルナークのような情報収集能力。特攻として死をも仕事の中に組み込んだウヴォーギンやノブナガの覚悟。全てを大局的に見ることの出来る、フランクリンやパクノダの視野の広さ」
「手足にはそれぞれ役割がある。それをまとめるのが頭…つまりクロロの役目だ、と」
「そうだ。だが俺は、この立場を俺でなければ成し遂げられないとは思わない。多少やり方は変わっても、蜘蛛は蜘蛛として生きていくだろう。…その時にこそ、『身体』の出番だ」
「……身体？」
「本来、昔のAに課せられた役割のことだ。頭は無くなればすげ変えればいい。手足も、より有能な手足にすることが出来る。だが、頭から発した命令を遜色なく手足に伝え求められる最大限の利を得るためには、優秀な身体が必要だ。…どんな頭になっても蜘蛛として行動できるための、信念を持った身体がな」
「……それが、昔の私だった。今の私にも同じ役割を求めると？」
突き刺すような視線に、クロロは苦笑で返してきた。
「そうであれば嬉しいと思う。だがAにはAなりの理念があるだろう？…それを無理やり覆してまで、とは思っていないよ」
(それを聞いて、安心した)
(誰がどう思っていようと)
(クロロは私を強制しない)
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作者名：灯霧
| 作成日時：2017年6月25日 15時
