story43 ページ44
「ここね」
「すごい……」
夕方になり、Aはフェイタンの蔵書が置いてある部屋へと案内された。本棚に所狭しと置いてある本の山に、唖然とする。
「…ここって、普段は使わないアジトじゃなかったっけ」
「そうよ。だから少ししか持てきてないね」
「これで少し！？」
ギョッとしたら、煩いと言わんばかりに顔を顰められた。だがまぁ、仕方ないだろう。軽く百や二百を超えそうな量なのだから。足を踏み出し、目に付いたタイトルのものを一冊手にする。有名画家の画集だ。
「……これ」
「知てるのか？」
「マースが好きだった画家。何度か競りにいかされた」
「ち。あの豚にその画家の絵が理解出来たとは思いたくないよ」
「芸術は門外だから、私にはよく分からなかったけど。マースはどっちかっていうと価値のある画家だから、買っていたってイメージだな」
パラパラとページを捲る。なんとなく馴染み深かっただけで、別に興味がある訳でもない。すぐに棚へ戻し、次に手にしたのは文庫本。
「………『ドキッ、海辺でワンナイト』…？」
「ギャグ恋愛小説ね」
「…こんなのも読むんだ」
「本なら何でも読むよ。ただソレに関して言えば、下らないの一言だたね。ネタとして保管してあるだけよ」
「…ですよね。幻影旅団がギャグ恋愛小説を愛読とか…いろんな方面に与えるショックが大きすぎる」
見なかったことにしよう、とその本を戻すAを見て、フェイタンは身を翻した。
「マチには言てあるから、好きなだけ読むといいよ」
「うん、ありがとう」
(気のせいではないだろうと思う)
(Aの雰囲気が)
(昨日に比べて柔らかくなっていたのは)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 45人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：灯霧
| 作成日時：2017年6月25日 15時
