story42 ページ43
暫くして部屋を訪れたマチに『怪我人が何時間もゲームしてるんじゃないよ！』と怒鳴られて、男二人は部屋を追い出された。
「まったく…。もう少し自分が怪我人だって事を自覚しな」
「…おっしゃる通りで」
しおしおと項垂れるAの包帯を、テキパキと変えるマチに何も言えない。
「……まぁそうだね。このまま大人しく安静にしていれば、完治までは一ヶ月ってところだろ。まともに動けるようになるまで、二週間」
「そう……。ありがとう」
「治療費はきっちりいただくよ」
「法外な請求って小耳に挟んだけど…いかほどに？」
「そうだね…フェイタンの拷問がほとんど原因だし、割引して…三千万」
「……分割でいいですか。そんな持ち合わせないよ」
「仕方ないね。今回だけ特別だ」
苦笑するマチに、ども、と頭を下げる。そしてふと、疑問に思った。
(今はこうして私の事を診てくれているけど…普段は蜘蛛としての活動が無い時、どうしてるんだろう…。まさか、ニート？)
目の前にいるマチからは、そんな光景が想像できない。
(闇医者…有り得そう。手慣れてるし)
「…なんだい、そんなじっと見て。言いたい事があるならさっさと言いな」
「……いや、別にそういう訳じゃなくて」
なんとなく誤魔化す。そういう質問をするには、距離が遠すぎる気がしたから。マチはマチで、ふーんと相槌を打つ以外に反応しない。Aと自分たちの距離感を、確実に掴んでいる証拠だ。
(少なくともあと二週間、ここにいる)
(そう考えたら、今後私がどうしたいのか)
(それを考えない訳には行かなかった)
(唐突に訪れた自由は私を翻弄する)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 45人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：灯霧
| 作成日時：2017年6月25日 15時
