story4 ページ5
クロロは蜘蛛としての服装に身を包み、マチとフェイタンを連れてそのホテルへやって来ていた。
「団長。本物なんて持ってきて良かったわけ？」
マチの疑問も最もだ。クルタ族襲撃以降、緋の目のコレクションは一通り愛でて売り払った。今手にしているものを除いて、全て。とりわけ緋色が濃いと、手元に残してあったものだ。
「まさか。これは囮だ」
「でも、本物だろ」
「奴らがこれに手を出す前に、ワタシ達が殺ればいいだけの話しね」
それを最後に、三人とも口を閉ざす。エレベーターの中に入って、最上階のスイートルームを目指した。指定された部屋の前には、物々しい黒スーツの男が二人。気配から察するに、奥の部屋にも何人かいるはずだ。三人の姿にこちらを向いた黒スーツが、口を開く。
「何者だ」
「旅団」
問いかけに簡潔に答える彼の真意を、マチとフェイタンは的確に察した。
(つまり、皆殺しね)
手足である二人はともかく、頭のクロロの面が割れるのは好ましくない。彼は元々、自分の顔を見た全員を殺すつもりだったのだろう。
「ボスは中だ」
そうとも知らず、男は一歩下がって扉をノックした。誰何の声に、旅団三人の眉があがる。
「誰」
「取引相手が来た」
どう聞いても女の声だった。が、女だからと油断するつもりは無い。扉が開き、女が姿を現す。燃えるような赤い髪と、対照的に無表情な仮面。白のブラウスと黒のパンツというシンプルな装いをした彼女に促され、三人は部屋の中へと足を踏み入れた。
(こいつが本当のお目当てね)
(マチ、フェイタン。まだ手を出すなよ)
(わかてるよ)
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作者名：灯霧
| 作成日時：2017年6月25日 15時
