【フェイタン】蜘蛛の糸【HUNTER×HUNTER】 (ページ30)

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マチにミーティングの内容を伝えた後。フェイタンはマチに代わってAが横たわるベッドの横にあった椅子に腰掛けた。

(……変わてしまたね)

赤い髪のひと房を手に取る。それはなぜか三つ編みにされていた。

(A…)

艶やかな黒髪は、フェイタンが浴びる血の色と同じものになってしまった。丸く大きかった瞳は、細く垂れ気味に。今は包帯で顔までは見えないが、拷問前の顔を彼は鮮明に覚えている。

(なんであの時、他の方法を取ろうとしなかたね)

五年前、ヘリの中で見せた笑顔が脳裏を過ぎった。その笑顔に、幼い頃の笑顔が重なる。

流星街で出会った時、Aはまだ名前を持たなかった。名も無い貧弱な子供だった。クロロたちとつるみ始めた頃のフェイタンは、持ち前の警戒心でどことなく仲間に馴染めなかったものだ。一人で流星街を彷徨くことも、よくあった。その時に、Aと出会ったのだ。男達に追われ、必死に逃げてきたAと。

『たすけて！』
『…は？』

いきなりぶつかってきた自分より背の低い子供は、いきなりそんな事をのたまって。あまりに必死な形相に驚いたフェイタンは、反射的にその腕を引っ張り、瓦礫の中に隠れてしまった。男達をやり過ごしたあと、外に出たら顔から零れるんじゃないかと思うくらいの笑顔を向けてきて。

『ありがとう！それじゃあ運が良ければまたね！』

あっという間に走り去っていく背中を唖然と見送ったのを覚えている。だがその時は、もう二度と会わないだろうなんて思っていた。

(普段は思い出しもしない子供の頃)
(ワタシはあの笑顔に間違いなく癒された)