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story2 ページ3
電話の男はきっかり一時間後にやって来た。キィンッと音がなり、防御璧の念が解けると同時に部屋に入ってくる。
「行くぞ」
Aの姿を見ると、すぐに男は身を翻した。黒の細身のパンツルックに品のあるブラウスを着崩したAの首元には、先程までは無かった首輪がある。プラスチック製のそれを、無意識に指でなぞりながら後について歩き出した。
(色気も何もあったもんじゃない)
お洒落には興味が無かったが、それにしてもこのプラスチック製の首輪は嫌いだ。これはAが『物』として扱われている証拠。仕事上色んなところに連れ出されるが、他人と関わる仕事の時は必ず、奇異の視線に晒される。いちいち気にするほど繊細ではないが、良い気はしない。
男の乗ってきた車の助手席に座り、発進。その段階でようやく、男が口を開いた。
「今日の仕事内容は、ボスの護衛だ。取引中、有事があればボスの盾になれ」
「他には」
「相手を殺せるようなら、それが一番いい」
つまり、護衛とは名ばかりでチャンスがあれば取引相手を殺すのがAの仕事という事だ。沈黙で答えるAの前に、すっと白い何かが差し出される。
「これをつけろ」
無言のまま受け取った。白い面だ。有名なオペラに出てくる怪人のように、口元のみが出る無表情な面。それを顔に当て、視界を確認して、もう一度Aは口を開いた。
「相手は」
「幻影旅団」
(それっきり、男は口を開かなかったし)
(私も口を開かなかった)
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作者名：灯霧
| 作成日時：2017年6月25日 15時
