story46 ページ48
チャイムまで、あと数分だろう。慌ただしく教室に戻っていく生徒が、ちらほらと出始めた。涼も、次の授業の準備をしなくてはならない。だが海藤に答えないまま職員室に行くのは、何故か逃げるように後ろめたいと思った。
「…私はただ、怖いと思った。私がそれを問いかけられ、答えたとする。だがそれが無駄だ、と言い切られることが怖い」
周囲は、意味のある行動をしている。だが涼の行動は無意味だと、そう言われるのが怖かった。だから何をしているのかを隠してきた。自分が向き合いたくないものには、全力で蓋をしてきた。
「……失望したって顔だな」
「あまりに俗物的な考えだったので」
「私は単なる人間だ。教師なんてやってても、偉くもないし崇高な思想や理想論を語るには現実を見すぎてきたしな。…意に沿わない回答でも、これが私の答えだ。……満足か？」
「えぇ。少し安心しましたよ」
意外な言葉に、目を丸くする。そんな涼を見て、海藤はニヤリと笑った。
「冴木先生は、いつも自信たっぷりですからね。独善的な考えの持ち主だったら、軽蔑していたところです」
「……充分、独善的な考えだろ」
「俺はそうは思いませんでしたよ。先生も所詮、一人の人間なんだって思って親近感が湧きました」
「なんだそりゃ。そんな高尚な雰囲気だったのか？」
「俺からしたら、無意味に後光が差しているような人だったので」
「……悪い、全然わからん」
「わからなくて結構です。それは違うと、たった今証明されましたから。……では、失礼します」
(次の授業のチャイムが鳴り)
(次のクラスの生徒が私に声をかけても)
(すぐに動くことは出来なかった)
(海藤に、向き合えと言われている錯覚をした)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 152人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
灯霧(プロフ) - リーさん» コメントありがとうございます！お返事遅れて申し訳ございません！飛影はカッコイイですよね！私の文章で少しでも伝わったならよかったです！ (2022年6月30日 16時) (
レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
リー - 最後まで読ませていただきました‼本当に面白かったです！飛影君は本当にカッコイイです (2022年6月24日 19時) (レス) id: bae08d35f3 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - おれんじぜりーさん» コメントありがとうございます！桑ちゃんは男ですwww (2019年3月5日 16時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
おれんじぜりー - 面白かったです！確かに桑原かっこいいですよね、男らしい感じがしますw (2019年2月24日 14時) (レス) id: 89ff127a12 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - エリンギの里さん» ありがとうございます！ほんと、コメントいただくと嬉しいです！今後も亀ですが、よろしければ見守ってやってください！ (2018年2月7日 0時) (レス) id: 4638cf4153 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：灯霧
| 作成日時：2016年7月28日 23時
