story26 ページ28
少し離れた場所で、涼は塔に落ちる雷を数えていた。ピンポイントでそこに落ちる事を考えると、雷に由来した能力を朱雀は持っているのだろう。
「あっちもキリが無いし」
やる気もなにも無くなってしまったというのに、状況に変化は無い。仕方なく重い腰を起こして、涼は呪符を二枚構えた。狙うは養殖人間が出てくる、塔の両脇にある二箇所の出口。
(壊して下手に穴を開けるよりは…塞ぐ程度がいいか)
すべての集中力を、呪符に向ける。
「はっ！」
涼の霊気を纏った札が、飛んだ。目指す場所に張り付くのを確認し、右手を突き出す。剣印と呼ばれる印を組み、それを横に一閃した。
「臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前！……結！」
九字を斬ってから張った結界は、桑原の動きを止めた縛呪よりも強力なものになる。出口で養殖人間の大渋滞を巻き起こし、涼は三人に叫んだ。
「奴らがこれ以上増えることはねぇ！今の内に片付けろ！」
意識を集中する。結界に体当たりする養殖人間の衝撃は、そのままダイレクトに涼に襲い掛かっていた。
(今の私の力じゃ、この状態が精一杯……。奴らを送った後もここに残らなきゃ…。サイアク…)
霊界絡みは、いつもこうだ。とにかく面倒で、怪我もすれば痛い思いもするし、そしてひたすらに疲れる。そう理解しているからこそ、涼は自分で戦うつもりなんてこれっぽっちも無かった。
(なのに白虎と戦って、青龍殺そうとして、今はこんな面倒なことまでやって)
まるで今までの自分とは違う行動だ。桑原がいることを差し引いても、彼らは涼を乱す。
(それが今じゃ、悪くないかも、なんて)
自嘲していたら、蔵馬と飛影が振り返っていた。いつの間にか、外に出ていた養殖人間は全滅している。
「おい！早く貴様もこい！」
手を差し出す飛影の姿と、心配そうな蔵馬の表情。何故か壁に張り付いている桑原。三人を見て、肩をすくめる。
「私はこのまま、奴らを閉じ込める。結界を遠距離で維持できるほど、霊力は残ってねぇからな。代わりにこれを持っていけ」
三枚の呪符を、三人に投げた。手にした瞬間、疲れが少しだけ緩和する。
「これは…！」
「無いよりましだろ。後で迎えに来い」
「その前にくたばるなよ」
「けっ、そっくりそのまま返すぜチビ助」
「涼さん！すぐ戻るっすからね！」
(蓄積される痛みと疲労)
(何よりも嫌っていたこの感覚)
(でもそれを上回る、不思議な感覚があった)
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灯霧(プロフ) - リーさん» コメントありがとうございます！お返事遅れて申し訳ございません！飛影はカッコイイですよね！私の文章で少しでも伝わったならよかったです！ (2022年6月30日 16時) (
レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
リー - 最後まで読ませていただきました‼本当に面白かったです！飛影君は本当にカッコイイです (2022年6月24日 19時) (レス) id: bae08d35f3 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - おれんじぜりーさん» コメントありがとうございます！桑ちゃんは男ですwww (2019年3月5日 16時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
おれんじぜりー - 面白かったです！確かに桑原かっこいいですよね、男らしい感じがしますw (2019年2月24日 14時) (レス) id: 89ff127a12 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - エリンギの里さん» ありがとうございます！ほんと、コメントいただくと嬉しいです！今後も亀ですが、よろしければ見守ってやってください！ (2018年2月7日 0時) (レス) id: 4638cf4153 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灯霧
| 作成日時：2016年7月28日 23時
