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あー、赤葦くんのバカ。嬉しいけどさ。
今日は嫌なこと忘れるつもりで来たのに、また傷が疼いてくるじゃんか。
『赤葦くん凄すぎ。全部正解だよ。
本当は自分が一番嫌いなんだよね。
あの子に負けて当然と思ってるのも。
全力でやって負けるのが嫌で、まだ私は本気じゃないってスタイルで生きるのも。
もう疲れちゃった。
周りが楽しそうに恋愛してるのも、チームメイトがやる気ないのに上手いのも。
なんか全部全部嫌になったんだ。
暑さのせいだといいのにね、これもさ。
でも、ありがとうね。認めてもらえるって、嬉しいんだね。』
赤「暑さのせいですよ。
だから目から汗が止まらないのも仕方ないです。」
そう言った赤葦くんは私に近づき、目尻の涙を掬ってくれる。
『そう、これは汗、だからね!』
メイクしてるのに嗚咽が止まらない。
ここでも可愛く泣けない自分に笑えた。
仕舞いには、
"ほら、今なら無料です。"
なんて腕広げてくるから、雀田さんのこともすっかり忘れて、あの二人のことも今は頭になくて。
驚いて固まった私をすっと引き寄せた赤葦くん。
あやすように背中をさすられる。
"これもあれです、夏の魔物のせいってやつですから。"
練習中聞こえる冷静な声なんかじゃなくて、甘さが含まれた赤葦くんの声は毒だ。
気づいたら背中に腕を回してしまった自分がいた。
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作者名:...syokatsu... | 作成日時:2022年9月10日 4時