HiGH&LOW ヴィスコンティ -five- (ページ6)

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皆がいなくなる夢を見た｡
どこに行っても､どこ見渡しても､
人の気配すらなくて｡
明かりがついていたから期待して開けた
ITOKANのドアの先にも
誰一人としていなかった｡

だから目を覚ましたときに
優しい顔でこちらを見つめるヤマトがいて､
それだけで息が詰まるくらい
涙があふれた｡
抱きしめてくれる手｡
頭を撫でる手｡
それらすべてが本物で､実際にあって｡
情けないけれど
ヤマトの肩を涙でぬらした｡

.

ナ｢…A!
よかった､目ぇ覚めたのか…!!｣

買い物に行っていたのか､両手に
レジ袋を持ったナオミがドアを開けた｡
帰ってくるなりレジ袋をどすっ､と床に
落としてしまう｡
そのまま私に駆け寄ってヤマトから
引きはがすように抱き締めた｡

ヤ｢おいナオミ…!
病み上がりなんだからあんま
乱暴すんじゃねーよ!｣

ナ｢うるっせ…っ｣

｢いいよ､ヤマト｡
ありがとう｡大丈夫｡｣

私の言葉に納得した様子のヤマトは
渋々ナオミを止めようとした手を
引っ込めた｡

｢ヤマト､ナオミ｡
迷惑かけて…心配かけてごめんね｡｣

ナ｢…本当…だよっ…｡
どれだけ心配したか…｡｣

背が高くてモデル体型のナオミは
私なんか覆い尽くしてしまえる｡
ソファに座ったままの私の肩には
ナオミの頭｡
少し体制的に苦しそうだけど､
大丈夫かな､なんて｡
いらぬ心配をしてしまうのは､
私が今までさんざん二人に
迷惑をかけてきたからだ｡
とん､とん､と優しくナオミの背中をたたく｡

ヤ｢話したくなかったらいい｡
もう一回聞くようでわりーけど､
…何があったんだよ｡｣

もうこれ以上
迷惑をかける気にはなれなくて､
私はしばらく黙る｡

ナ｢…今まで散々私達を頼っただろ｡
今更隠すなよ｡｣

ナオミの強気な一言｡
でもそれは私を思ってのことで―

でも､これは話せない｡

｢ごめんね｡
…いつか､話すから｡｣

ナ｢…約束だからな｡｣

それ以上は聞くことをしない二人に､
私はある意味救われた｡