HiGH&LOW ヴィスコンティ -five- (ページ14)

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えへへ､とほほえむ龍｡
でも問題はまだ終わっていない｡
龍はおそらくあいつらから逃げてきて､
山王街に迷い込んでしまったのだろう｡
ならば当然､帰り道は知らないはずだ｡

…また､あいつらに
会わなきゃいけないのか｡

龍｢おねーさん､大丈夫…？｣

ナ｢A､周りが見えてないよ｡
今のあんた､すごく怖い顔してる｡｣

ハッ､と我に返るけど
張り付けたような笑顔はうまく
龍の心には響かなかったみたいだ｡
その証拠に､身の危険を感じたように
ズボンを掴む手がゆるんでいる｡
いつでも､逃げられるように｡

｢ごめんね､龍｡
私なら大丈夫だよ｡｣

今度は心からの笑顔で笑いかけた｡
せっかく守れた命なんだ｡
どうせなら最後まで
天秤に掛けていないと｡
私の都合はどうだっていい｡
龍を無事に
送り届けることさえできれば｡

ブオオン､とバイクの
エンジンをかける｡
まだ背の小さな龍が
振り落とされないように､
腰あたりでつないである手を
さらにうえから紐で軽く縛った｡

｢痛かったら言って？｣

龍｢んーん､大丈夫!!｣

｢絶対離しちゃだめだよ｡
じゃあ､行くね｡｣

ナオミ達に手を振って､
山王街を後にした｡

エンジン音だけが響く､
ちょっぴり退屈な時間｡
初めてのバイクで緊張しているのか
龍は一言も話さなかった｡
怖がらせちゃったかな｡

…やっぱり私､子供は好きだけど
扱いには向いてないみたい｡

一言も交わさぬまま､
たどり着いた無名街｡
バイクから降りて龍の手から
紐をはずしてやる｡

｢真っ先にスモーキーんとこ､行きなよ｡
きっと心底心配してるだろうから｡｣

こくっ､と頷く龍｡
警戒は未だ解かれていないのか､
ださない声が少し寂しい｡
ばいばい､と手を振って
バイクに跨がる｡

龍｢っ､ばいばいっ!!｣

去っていく私の背中に､龍は
精一杯の大きな声で別れを告げた｡
少し驚いたけれど､背中越しに
手をもう一度振った｡

―あいつらに会わなかったのは､
とても幸運だったといえる｡

初めて人の役に立ったという感覚と
顔を合わせなかった幸運で
気分が良くなった｡
帰り道は鼻歌を歌いながら｡

沈む途中の夕日が､
なんだか暖かく見える｡
子供の頃はあんなに寂しくて､
鬱陶しかったのに｡

１日の終わりは､
おまえが来るからだ!夕日!

なんて思っていた小さな頃｡
夕日なんて消えちゃえばいいのにと
遊び抜いた私は
まだ元気な体を泥だらけにしたまま
呟いていた｡

清々しいんだな､夕日って｡

綺麗なその景色は
この後も忘れることはなかった｡