HiGH&LOW ヴィスコンティ-four-

32 ページ10

その問に､答える者はいない｡

?｢縄､ほどいてほしいか？｣

ニタニタと不気味に笑う男｡
その汚らしい視線を向けるな｡
雨宮が汚れていく気がする｡
まるで心をタールみたいな毒物が
塗り替えていくような…｡
ドロドロしたものが渦巻いている｡

ダメだ｡
あの夜を繰り返しては｡
死神を呼び起こしては｡

下唇を噛んで何も言わずに睨みつける｡

?｢犬は犬らしく這いつくばれよ!!
靴を舐めろよ!!｣

痛い､心が汚れていく｡
黒く渦巻いた何かが､
私の全てを飲み込む｡
ダメ､ダメ｡
耐えろ､ひたすらに耐えろ…!!

言いなりにならないとわかると､
すぐさまスキンヘッドの手下が私を
いたぶり始めた｡
腹を蹴られ､腕が腫れ､
口の中が血の味がしても｡

私はけっして屈しなかった｡

目覚めたばかりなのに
再び薄れていく意識の中｡
広斗が脳裏をよぎる｡
…広斗｡私､がんばったよ｡
今瞼を綴じてしまったら､
帰れなくなる気がしたから…｡





.




.






.





｢おい｡｣





.




.





.

33 /？/→←31

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す