長い悪夢の救世主【wrwrd】 (ページ42)

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42夜目ページ42

目の前の男が動けなくなる

｢だ、大丈夫か！？｣

｢大丈夫や...ゾムさんそいつ頼むわ...俺は、Aちゃん探してくる...｣

｢は！？何言っとんの？自分がどれだけ傷負ってるか考えてから言えや｣

｢それくらい分かっとる。だけど、行かせてくれ｣

普段より低い声を出してゾムに言えばぐっと押し詰まった様な顔をする

切られた左腕を抑えながらAちゃんが走って行った方へと歩き始めた
ゾムは何も言わない

いろんな所が痛くて、所々血も滲んでいて

でもそんな事気にならなかった

｢Aちゃん！返事して！！｣

痛む足を引き摺りながら走って
城内を駆け巡る

息も切れて、でも名前を呼びながら走った

不意にインカムにノイズが走る

"大先生"

｢はｯ...なんや、ロボロ...ふｯ｣

"Aちゃんは城外に出たみたいや。けどその後の行方が分からん、どこのカメラにも映ってないねん"

｢...分かった｣

くるりと進行方向を変える
城内には居ない、もっと厄介になった

大丈夫やろか、怪我はしてないかな
外に行ったのなら雨に打たれて寒い思いをしとるんやないのか

どこにおるんや、Aちゃん

返事してや

無事で、いてや

雨がよれたスーツに染みていく
冬も近いこの季節の雨は酷く冷たかった

雨が血と混ざって赤黒く染まる
足は止めない

カメラに映らない場所は何処だ
今の短時間で行けるカメラのない場所なんて危険な場所しかない

暗い路地裏、地下の水路

でも路地裏に行くまでにカメラに映るはずやし地下の水路に行くためのマンホールは城の周りにはない

なら別だ、後、カメラのない場所は...

城の裏の森

でもあそこは夜に狼が出て危ないから夜には行ってはいけないと何度か教えた
俺以外からも聞いてるはずだ

Aちゃんに限ってそんな所に行くわけがない

＿＿＿でも、パニックを起こしていたら

最悪の事態も考えられる

｢Aちゃんｯ！！｣

城の裏の森に駆け出した

お願いやから、無事でいて