長い悪夢の救世主【wrwrd】 (ページ38)

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38夜目ページ38

夢主side

このお城に来てしばらくの時間が過ぎた
文字も読めるし書けるようになった

最近は本を読むのが好きだ
今日も本に夢中になって時間を忘れていた
慌ててお風呂に入って寝る準備を始めたところ

読み終わった本をエーミールさんに返しに行った帰り

白い床は私の靴に合わせてコツコツと鳴った

外では雨が降っている
このお城は楽しい
楽しくて、幸せで、暖かい場所だ

でも前の記憶がなくなった訳じゃない

何度も刺された注射の跡は消えないし殴られた跡だってくっきりと残っているところもある
それに、目の前で死んでいった

お父さん、お母さん、ナノ

そして名前も知らない人達、少しだけ仲良くなった友達

その記憶はまだ私の頭の中に強く残っている

たまに、みんなが信じられなくなってその度にそんな自分が悲しくなる
怖くなる

これだけ沢山のものを与えてもらっても私はまだ、彼らがあの人達の仲間なんじゃないかとその考えが捨てきれずにいる

最低だ。

もしもみんなが親と形容されるなら私は"オヤフコウモノ"なんだろう

あぁ、私は"オヤフコウモノ"だった
私が居なければ家族は死ななかったはずだから

『...やめよ』

前に鬱くんが雨の日は悲しい気分になる事が多いって言っていた
多分それのせいだ
雨のせいなんだ

頭を軽く振って頬を挟んだ

『明日も頑張ろう』

エーミールさんは明日、何を教えてくれるんだろう
そう言えば今度ゾムくんも戦い方を教えてくれるって言ってたっけ
楽しみにしとこう