長い悪夢の救世主【wrwrd】 (ページ35)

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35夜目ページ35

いつか買い物の時に買った犬のぬいぐるみをぎゅっと抱きしめたAちゃんはぽつりぽつりと話をした

夢を見たと
連れ去られる時の夢

その内容は痛く苦しいものだった

『それ、で、その後死んじゃったみんなを見せつけられた
みんな、真っ赤で、苦しそうでｯ...!!』

｢大丈夫、無理して話さんでもええから｣

力を強めたAちゃんの背中をゆっくり撫でる
小さく頷いて深呼吸をした

『はじめはね、痛いの少なかったの
でも、心がズキズキして息苦しかった』

話されていく言葉に相槌をうつ

『その後はね、怖かった
良く分からない薬をうたれて、怖くて、痛くて、苦しかった』

『その次はね、悲しかった
目の前で知らない人が真っ赤になって動かなくなる
死んじゃう』

『それからね、お話をする人が連れてこられた
その人は怖そうに震えてて、私も怖かった
でもね、だんだんお話して、少しだけ仲良くなるの』

『でもそれをしたら目の前でその人が死んじゃうの』

『だから、しないようにした』

『次は、痛かった。痛くて苦しかった
死にたくなった。でも、死にたくなかった』

『それで、もうダメだなって思った時、鬱くんが助けてくれた』

ありがとうとひとつ呟いて俯いてしまった

骨と皮しかなかった体は健康的に肉がついてきている
多少大きくなった体はまだ中学生程の大きさに感じた

｢Aちゃん、よう頑張ったな｣

肩を抱き寄せて頭を撫でれば首だけを動かして肯定を表した
溢れ出した涙を拭いながら俺に体重を預ける

Aちゃんの体を静かに受け止めてとんとんと肩を叩いた

｢生きててくれてありがとう。もう大丈夫やからな｣

声を上げて泣き出したAちゃんは温かかった