長い悪夢の救世主【wrwrd】 (ページ32)

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32夜目ページ32

木の上から降ろしてもらってシッマは仕事があるからと名残惜しそうにお城の中へ戻って行った
綺麗だったな、街

いつもと違う位置から見るから別のもののように感じた

何をしようか迷ったけどもう一度同じ場所に座って風にあたる
甘い花の匂いがする

と、人じゃないなにかが近づいてくる音がする

分からない、人の足音しか、私には分からない
これは、何...？
＿＿＿怖い

動きたくても体が動いてくれない
小さく揺れて自分が冷たくなっていく

出来ることがなくてただ、目をつぶった

ただ近づいてくる音
音が止む

｢あれ、Aちゃんだ。何してるの？｣

聞きなれた優しい声が聞こえて目を開く
顔をあげれば真っ白い馬に乗ったらんらんの姿

『白馬の、王子様...』

ht｢え、俺の事？それ
なんか恥ずかしいな...｣

照れたように笑うらんらんを見て体の力がふっと抜けた
そっか、馬の足音だったんだ
なら、怖くない

外道丸の上から長い足をひらりと上げて目の前に降りたらんらんは膝をついて私より下の位置に居る
白い手袋を付けた手を差し出して笑顔で私に話しかける

ht｢姫、私と一緒にお散歩でもいかがですか？｣

私はその手を取って先生に習った言葉を言ってみる

『はい、喜んで』

笑顔の花が咲く

外道丸の上はすごく景色が良い
後ろにはらんらんが居て私の事を包み込んでくれてる
すごく暖かい

一定のリズムで上下に揺れる"じょうば"は心地がいいものに違いなかった

たまに吹く風が髪をさらっていく

お城の裏にある森の中に入れば葉っぱの間から漏れるお日様の光が綺麗な模様を作り出していた

ht｢見て、Aちゃん。あそこにリスがいるよ｣

『あ！ほんとだ！可愛い...』

ht｢ここの森には動物が沢山居るからね
また誰かと来てみたらいいよ
でも夜は来ちゃダメだからね｣

『なんで？』

ht｢夜になったら人を襲う狼が出るんだ
まぁあっちも森からは出ないし夜森に来なければ大丈夫なんだけどね｣

キラキラと光る森に目をやってみる
夜、この森はどんなに変化するのかな
怖い事に変わりはないと思う

たまに木の幹にみっつの深い傷が刻まれてる
あれが多分この森に狼がいる証