長い悪夢の救世主【wrwrd】 (ページ29)

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29夜目ページ29

eml side

eml｢ではこれはなんですか？｣

『86』

eml｢正解です｣

Aさんに授業をつけて1週間
Aさんは記憶力がとても良く常識範囲内の法律や言葉、文字などをいとも簡単に覚えた

時々詰まる時もあるが想像の斜め上をいっている

簡単な計算方法を教えて問題を出してみれば答えをぽんと出す

年齢に合わない適応能力だ
小さな時に勉強が出来ていないのにこんなにも覚えられるというのは才能があるとしか言いようがない

eml｢Aさんはすごいですね｣

『そう、ですか？私には分からないです』

寂しそうに笑う彼女
同年代の子どもと過ごす時間が極端に少なかったのだろうか。たまにそんな素振りを見せる

eml｢こんなにスムーズに授業が進むとは思いませんでした。学ぶ事は好きですか？｣

『はい、とても楽しいです』

eml｢それは良かった。なら今日の宿題を出しましょう。この本を読んできなさい｣

差し出した茶色の本

それを受け取ったAさんは重さに少し目を見開く
しかし少しすれば嬉しそうに微笑む

『ありがとうございます、わからない所があれば聞きに来てもいいでしょうか』

eml｢はい、勿論です。いつでも聞きに来なさい｣

『それではまた夕ご飯の時に会いましょう』

一礼をしていくAさん
礼儀正しいその仕草は元々持ち合わせていた礼儀作法に付け加えたものだ

一体いつ学んだのだろうか

不思議でたまらないがそれが世界、世の中と言うものや

すっかり冷えてしまった紅茶を入れ直して勉強道具を片付けた

本当に彼女は賢い子だ