長い悪夢の救世主【wrwrd】 (ページ26)

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26夜目ページ26

訓練所を出てまた歩き出す

『ねぇ鬱くん、次はどこ行くの？』

ut｢次～？図書館行くで｣

前を見ながらにこにこ笑う鬱くんを見て私の足も軽くなる

図書館
小さな時お母さんとよく行った
沢山本があって絵本も難しい本も場所が足りないとでも言うように並んでいたのをうっすら覚えてる

文字、もう忘れてしまった

私には話すことしか出来ない

『鬱くん...』

引いてくれている手に少しだけ力を入れて足を止める

心配そうに私を振り返って目線を合わせてくれた

あぁ、迷惑かけてる
なんでこんな事してるんだろう

ut｢どうしたん？｣

優しく、私に話しかけてくれる

『私、字、もう読めないから...』

俯いて自分の足と床を見つめる

迷惑をかける自分が
出来損ないの自分が
悔しくて下唇をぐっと噛んだ

頬に温もりを感じる

その温もりは私の顔をゆっくりと上へ向けさせた

ut｢大丈夫やで、安心し
誰も無理に読めとは言わんよ。それにAちゃんは今から読めるようになるから｣

上がられた顔の先には大好きな藍色の笑顔が広がる

心の栓が抜けたみたいに安心が広がって首を縦に降った

｢そんなら行こか｣ともう一度手を握り直して図書館へと向かう

ut｢エミさーん、邪魔するでー｣

大きな木の扉を開けて中に入る
ずっと昔に嗅いだことのあるような懐かしい匂いがした

大きな本棚の裏からエーミールさんが出てきて私達に微笑む

eml｢いらっしゃい。そこの席へどうぞ｣

進められた木の椅子へ腰を落とす
不思議とぴったりハマるする感じがした

eml｢Aさん、改めましてエーミールです
明日からAさんにお勉強を教えようと思います｣

お勉強...

ずっと憧れてた言葉

私は未だ勉強というものをしたことが無い
学校に入る前に捕まってしまったから

8歳から入れる学校に行く前に、私はこの世に無いものとして扱われた

『あ、あの、よろしくお願いしますっ！
お、勉強してみたくて、嬉しい...!!』

思わず飛び出した言葉に鬱くんもエーミールさんも笑った

｢勉強熱心なええ子やなぁ｣

突然に聞こえた声に振り向けば布をつけたロボロさんが居た
私を多分見つけてひらひらと手を振ってくれる
私も返しておいた

ut｢何しにきたん｣

rbr｢いやぁ、インカムが出来たからAちゃんに渡そう思ってな
はい、Aちゃん手出して？｣

右手を差し出すと小さくて固いものが手の上に乗った

rbr｢これで正式に仲間やで！｣

ようこそという声に顔が綻んだ