Chapter 04... ページ6
これは、数ヶ月も前の話。
「 だっり〜 」
ペタペタと廊下に足音を響かせながら歩く。
面倒なことに、日誌を届けたところで担任に雑務を頼まれてしまった。
ちょうど太刀川からの収集が無かったため、幸か不幸か最後まで終わらせることができた。
その代わり、米屋と遊ぶ予定を立てていたのには大幅なズレが生じてしまった。
出水は気だるそうにしながら、米屋からの連絡を確認する。
慣れた手つきで"いま終わった"と送信。
( 教室に物置いてくんじゃなかったな。 )
取りに行くのがだるい。
若干早歩きで教室へ向かうと、一人ぽつんと机に座っていた人物がいた。
藤原だ。
いつものように声をかけようとして、思わず踏みとどまった。
双子は誰にでも分かりやすいように髪型がお互いに違う。
Aは髪を括っていて、由良は髪を下ろしている。
教室にいる少女は、髪を下ろしていた。
( あれは…どっちだ？ )
出水がそう思う理由。
髪を下ろしているにもかかわらず、由良だと断定出来なかったのは、彼女のいる場所にある。
座っているのは、Aの席だった。
どっちだろうかと悩んでいたが、このままでは夕陽が沈んでしまう。
賢い出水は咄嗟に機転を利かせて教室に入る。
初めて人との関わりで自分の性質に感謝する日が来たのかもしれない。
というか、双子は別のクラスにするもんじゃないのか？
色々なことを考えながら、足を教室に入れた。
「 よっ！どうした？ 」
「 …あれ、まだ帰ってなかったの？ 」
「 まーな。雑用頼まれてさ。 」
どちらにも同じような態度で接する出水は当たり障りなく挨拶をする。
初っ端の話し方では双子を判断しにくかった。
もう少し話してから帰ろうと、彼女の前の席に行き、背もたれに腕を置くようにして椅子を逆向きに座った。
何をしているのかと手元を見れば、数学の教科書。
勉強熱心なものだ。
頬杖をつきながら未だどちらかわからない彼女をじっと見つめた。
「 どうかした？ 」
「 いや？何してんのかなーって。 」
「 数学の復習。 」
「 真面目なのな〜帰んねーの？ 」
「 うん。お姉ちゃんが今呼ばれてるから待ち。 」
なるほど、Aの方だったか。
解決したところで帰ろうと腰を上げたが、なんとなく目の前の彼女が気になる。
頬杖をついていない方の片手で、しかもノールックで携帯を触る。
宛先はもちろん米屋。
" わりー、もうちょい遅れる "
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作者名：- | 作成日時：2023年5月10日 22時
