Chapter 27... ページ29
「 返事を聞く前にさ、おまえがどうして由良ばっか気にしてんのか教えて欲しい。 」
「 ……え？ 」
「 おまえのこと見てたから分かんだよ。…恥ずいな、これ。 」
片手で口を覆いながら視線を逸らす。
そんな出水の目の前で、Aはさらに動揺した。
なぜ分かったのか。
どうにかして誤魔化そうと考えていたのだが、彼があまりにも真剣すぎて。
誠意に答えようと、正直になった。
「 ………私は、由良には絶対敵わない。いつだって、何をしたって由良より優れていたことなんてない。 」
「 …… 」
「 勉強も運動も性格も、何もかも由良より良くなくて。家族も周りの人もそう思ってる。 」
「 おい、それ 」
「 違うの。…………本当は、分かってる。みんなはそんなこと言わないし結局は自意識のせいでそう思ってるだけ。でも、本当は心のどこかではきっと、って…思っちゃって。」
ああ、これか。
いつも彼女が由良へ周りの人を斡旋させる理由は。
それはあまりにも自分勝手な判断で、でもどうしようもない思考で。
苦しんでいたことは、震える彼女の手が物語っていた。
「 だから、出水が色んなことに気付いてくれて。由良基準じゃなくて"私"で考えてくれて本当に嬉しかった。」
でも、あの告白のとき。
始めてAは出水を拒絶した。
出水自身は嫌がっていたと思っていたのだが、実際はやはり彼女の自意識の問題で。
「 ……あの時、私が髪の毛を解いた時に告白してくれたでしょ。 」
「 あ？ああ… 」
「 私が髪を下ろしたらそっくりな由良を思いだして、想いを告げたんだと思ったの。 」
「 っそれはっ…… 」
違う意味で捉えられるなんて。
いやでも彼女の境遇を考えたら出水の言動がややこしいかもしれない。
だが今誤解は解けた。
あとは彼女の気持ち次第なのだ。
「 今、おれの話聞いて解釈は変わったか？ 」
「 ……うん。 」
「 あ゛ーよかった……んじゃ返事を聞かせ…て、クダサイ。 」
いざ改まると緊張してしまう。
心音が耳のすぐ側で聞こえる。
Aの返事をもらうまで、何時間もかかったと思うくらい長い時間の気がした。
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作者名：- | 作成日時：2023年5月10日 22時
