Chapter 22... ページ24
「 ……は？ 」
戸惑うように声を上げたのは、意外にも出水の方だった。
今おれはなんて言った？
いや、もしかしたら今声出してねえかもしれねぇ。
……Aの顔を見るに、絶対声出してたな。
こんな感情本人には言うつもりなんてなかった。
例え告白をするとしても、こんな間抜けな方法を取るつもりなど毛頭ない。
失態という他なかった。
「 いや、まて！ちがっ……あ゛ーー！そうじゃなくて、クソッ 」
「 …… 」
( どーすんだよマジで！間違えたって言うのもちげーし…てかなんでAは黙ってんだよ！ )
沈黙が人生の中で一番恐ろしい。
Aに視線を向けても、俯いていてよく表情が見えない。
髪を解いてもいいとはいったものの、毎回表情が見えなければ本末転倒ではないか。
今のは忘れてくれ、と伝えようとしたが思い直す。
このまま逃げてしまって良いのだろうか。
下手したら一生気持ちなんて告げずに卒業を迎えてしまう可能性も高い。
今はチャンス。そう思えばいい。
自己解決したのか、一度咳払い。
あらためてAを真っ直ぐ見て、息を吸い込んだ。
「 A、あのさ 」
「 いずみっ！ 」
「 ぅおっ！？ 」
いきなり立ち上がるものだから、堪らず出水が驚く。
のくせに終始表情は髪に隠れたままで上手く感情を読み取らせてくれない。
ずるくないか、こっちは顔を紅くして話してるのに。
しばらく膠着状態が続いていたが、やがてAが小さな声で呟くように言った。
「 いや、あの…ごめん、私帰るね。 」
「 は！？ 」
慌ただしく机に広げてあった筆記用具や教材を鞄に入れる。
"目にも止まらぬ早さ"とはこのこと。
黙っていると思えば突然動きだす彼女の豹変ぶりには出水も目を白黒とさせた。
そんな彼をお構い無しに話し出す。
「 一応説明はここに書いておいたから、分かんなかったらまた別の人に聞いて。 」
「 ちょっ…！待てって＿＿＿ 」
この空気を見ぬふりして変えるのはなんなんだ。
若干の怒りを覚えて彼女の肩を少し強めに掴んで止めようとした。
だが、顔を見て、力を抜いてしまった。
「 おまえ、なんで… 」
「 ごめん。 」
手を振り払って教室から出ていってしまった。
彼は彼女を引き留められなかった。
肩を掴んで、髪の毛の隙間から見えたあの表情を思い出す。
なぜか、ひどく傷ついたような顔をしていた。
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作者名：- | 作成日時：2023年5月10日 22時
