Chapter 21... ページ23
＿＿＿＿＿「 あの子が"お姉ちゃん"って呼び出したのはいつからだっけ。 」
そこで出水の回想は終わった。
目の前で呆然とするAを頬杖を着きながら眺めていると、視線に気づいた彼女は慌てて冷静さを取り戻す。
なぜ慌てたのかは分からない。
「 A、絵好きなん？ 」
「 まあ…好きだよ。 」
「 なんで好きなんだよ。 」
「 な、なんで！？好きになんでとかある…？ 」
「 描いてると落ち着くーとかストレス発散ーとかあんじゃん。 」
「 そういう… 」
突然の疑問に動揺。
どういう意図の質問か理解するや否や、少し考え込む。
先程からそうだが、自分の感情を聞くと考えているのは何故だろうか。
出水は彼女の言葉を待った。
「 ……絵は、私の唯一の個性だから。 」
意味がわからない。
その言葉の意味も、彼女が翳りのある表情を浮かべたのも。
なんか、ムカつく。
恥ずかしいセリフだという自覚もあるし、あとで羞恥の念に駆られることも目に見えていた。
だが口が勝手に開いた。
「 絵が得意じゃなくたってAだろ。 」
「 それどういう 」
「 そっくりなやつが居ても全く同じやつはいねーだろ。誰と張り合ってんだよ。 」
「 出水、？ 」
「 今の今までおれはおまえの口から特技聞いたことなかったけど、ずっと仲良くしてたじゃねぇか。 」
それに、今だって自分を示すために髪を結う必要は無い。
今はAと由良を間違えるようなやつも居ないのだ。
何故か不貞腐れたように吐き捨てた出水を唖然として見るA。
「 っははははっ！ 」
「 な…！おまえっ 」
「 あはは、ごめん。なんか出水には笑ってばっかだね。 」
そう返しながら結っていた髪を解く。
彼女はどことなく幸せそうな表情を浮かべながら髪の毛を耳にかける。
出水と目が合うと、優しく笑った。
「 これで何回目か分からないけど、いつもありがとう。 」
心音は止まなかった。
出水の顔が紅いことに気付いていない彼女の察しの悪さに今は感謝せざるを得なかった。
こちらの緊張なんて考えもせず、笑みを浮かべたまま「 続き再開しよっか。 」と彼女はマイペースに手元のノートに書き込み始める。
あの日と同じ笑みをして。
はらり、と横髪のひと束が落ちた時、出水は無意識に呟いた。
「 すきだ。 」
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作者名：- | 作成日時：2023年5月10日 22時
