Chapter 19... ページ21
「 テストだり〜 」
「 口悪いよ。 」
本音。
別に米屋ほどできないわけではないが、面倒なものは面倒。
手元に握っていてシャープペンシルを放り投げるかのように机に置いた。
だが教えて貰ってる身として、直ぐに手に取り直して問題を見た。
「 んでここに掛かってて…意味がこの種類の中から判断するんだけど… 」
「 なるほどな。 」
「 ……ねえ、ほんとに解んなかったの？ 」
「 マジマジ。 」
半分本当で、半分嘘。
解こうと手を付けたがパッとは解らず。
だが参考書や教材を使えば、出水にとっては解けない問題ではない。
米屋の無茶ぶりのせいで解らない問題を見つけなければならなかったので、選出がこうなった。
スラスラと理解している出水を怪しむ。
だが依然として飄々とした態度を崩さないため、あまり追求しないことにした。
出水は要領いいから、聞かなくたって解けるだろうに。
ちなみになんとか平然を装っているが出水も緊張はしている。
まあ、当然である。
「 逆にこんな付きっきりで悪ぃな。 」
「 よく言うでしょ、人に教えると復習にもなるって。 」
「 だけどよ〜自分の勉強もあんだろ。 」
「 …お姉ちゃんは、できてるから。 」
ぽつり。
呟いた言葉は本当にか細い声で。
きっと聞かせるつもりなんてない自分の心の吐露だったはず。
出水はしっかり聞こえている。
だから、彼女の言葉を何も追求しなかった。
「 Aの特技って何？ 」
「 え？ 」
「 息抜きだよ、良いだろ。 」
机で腕枕をしながら、上目遣いでAに問う。
彼女の目には困惑が宿っていた。
意地悪をしたいわけではなかったのだが、戸惑う彼女を見て少し笑みがこぼれた。
「 ない、かも。 」
「 は〜？嘘つくなよ！ 」
「 う、嘘じゃないし！本当にないんだって！ 」
「 "思いつかない"が正解だろ。 」
図星なのか「ゔ…」と声を漏らす。
伊達に仲良くしてねーよ、と意味を込めてデコピンをしておいた。
もちろん、不服そうに睨まれたが。
「 なんかあるだろ？好きなこととかさ。 」
「 好きなこと、か。 」
しばらく考え込む素振りをして、独り言のように呟いた。
「 ………絵。 」
忘れていたことを思い出したかの表情。
好きなことを聞いていたのに、何故忘れていたかのような顔をしているのだろうか。
そんな疑問を頭に浮かべながら、出水には由良との会話が脳裏に過ぎっていた。
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作者名：- | 作成日時：2023年5月10日 22時
