HiGH&LOW by S. - ２ -

８７. ページ40

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リハビリに励む瑩を部屋の隅に置かれた丸椅子に大人しく座って眺めて、病室に戻ってから昔話や世間話に花を咲かせて。



そんな日々が過ぎ行く中で、大きめの荷物を持った彼が自動ドアに立つ日がくるのは案外早かった。






A『瑩…、』


瑩『ああーっ！清々しいくらいに晴れた空だな！』






大きく背伸びをした彼が、グルリと回ってこちらを向いて。






瑩『まぁ…、今生の別れってわけじゃねぇけどさ。うん…』


A『…、』


瑩『ありがとうな、A。お前が俺の相棒になってくれて、本当によかった』


A『…っ、』


瑩『……、お前も、ちゃんとお前の居場所に帰んだぞ』


A『ぇ…？』






なんで知ってるの、といかにもそんな顔をしているであろう私を見て、柔らかく笑った。






瑩『待ってんぞ。お前のこと。きっと』






ああ…、これか……。



私の首元に目を落とした、その視線の先にはコブラからもらったネックレス。



あの日のことが一気に蘇る。






瑩『……、はぁ。そろそろ行くかな』






すぅ、と吸われた空気と吐き出された息。






瑩『じゃあな、A。いつも笑顔で元気でな』






最後まで彼は彼だった。



あの無邪気な笑顔と、変わらぬ温もりで私の手を握った彼を乗せたタクシーはこれからどこへ行くのだろう。






A『瑩…っ、ありがとう…、』






−−−…



瑩『A……っ、俺はすっげぇ好きだったよ。お前のこと…、』






なんて、知る余地もなく。

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