HiGH&LOW by S. - ２ -

８４. ページ37

、



−−−…



『彼氏さん、目覚められましたよ』






五階B棟のナースセンターを通りかかった私に、婦長さんが落ち着いた笑顔でそう言った。





彼らの友情物語を見送って、そして私は自分の存在価値を問うた。



そして彼らの元を去った。



理由は簡単だ。



私が自分自身の存在価値を見出せなくて、彼らを騙していた罪悪感と、そんな私すらも許してしまう彼らの優しさになんだか心臓が痛くて。






A『ぇ…、彼氏…？』






どこかの誰かと間違えているのではないだろうか。



聞き返した私に対して、婦長さんは不思議そうに首をかしげる。






『あれ…、違いました？504号室の…


A『瑩…！！』






目覚めたっていつ…！



院内を走らないでくださいっ！！

慌てた婦長さんの言葉なんて聞こえないフリ。



生憎、そんなことにかまっている程の余裕はない。






504…！504…！！






A『瑩っっ！！』






外れてしまうんじゃないかというくらいの勢いでドアをスライドさせると、中にいた人物がこちらを向いて大きく目を見開いた。






瑩『よぉA！久しぶりだな！笑』


A『て……、る……』


瑩『んなとこで突っ立てないで、ほら、こっちこい。笑』






以前となんら変わりない笑顔が私に向けられている。






A『瑩…っ、』


瑩『……、泣くなよ…』






目頭がカーッと熱くなって、視界がものすごいスピードでぼやけていく私を見て彼は困ったようにそう言った。

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