かなわないやつ (ページ8)

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「ねえ、翔太。飲み過ぎじゃない？」

「うるさい、飲んでねえ。」

そう言いながらジョッキを呷る渡辺。
その顔は真っ赤。
なんでこうなったのかと言うと…。

…数時間前。

「俺今日焼鳥食いたい。」

渡辺のその一声で今日は焼鳥を食うこととなり。
言い出しっぺ、渡辺は美味そうに串を3,4本食べて、

「俺もう満足。」

そう言って、ずっと酒を呷っていた。
…そりゃこうなるわな。と、
俺と阿部で呆れ顔。

「はいはい、いいから水飲んでね？」

って渡辺の隣、阿部が水を渡しても
首を横に振るばかりでコップを手にもしない渡辺。
しまいには阿部の膝で寝始める始末。
ため息１つ零す阿部。それをみて苦笑いする俺。

「翔太、まじ、やべえ。」

「言えてるね。」

俺の苦笑いに釣られてか、阿部も苦笑いをして。

「で、さ。翔太も寝た事だし、聞くけど。」

「ん？」

「いつから？」

真っ直ぐに俺を見ながら少し首を傾げて。
その顔には微笑み１つ無くて。
至って真面目だ、と言った表情か。

「いつからって…？」

幾らとぼけたフリをしても、
きっと阿部には通用しないだろうけど。

「あ、安心してよ。気付いてんのは俺だけ。」

他の人は絶対に気づかないだろうし。と、
続けて言った。

「阿部は、いつ気付いたの？」

「結構、初めの頃かな。2人の空気が甘かったから。」

幸せそうだなぁ、って眺めてたらしい。
阿部には隠せないのか、と思うと頭が痛くなるけど。
それは阿部が優秀過ぎるからか。
変な所でドジな阿部なのに、
ここではドジ発揮してくんなかったのか。
とか色々思う所はあるけれど。

「俺は2人が好きだから、応援してるよ。」

って、最後には微笑んで。
笑顔が美しい人だな、本当。
まあ、宮舘には劣るけれど。

「ありがと、阿部。」

その後も2人で他愛の無い話をして。
しばらくして翔太も起きてくれたから、
この場はお開きとなった。

「じゃあ、俺は翔太送って帰るから。」

「ふっかぁ、またねぇー。」

と、阿部は翔太を支えながら帰って行って。
べろんべろんの渡辺に阿部は悪戦苦闘してる様子を
俺は2人が見えなくなるまで見送っていた。

「さーてと、どうすっかな。」

このまま自宅に帰るも良し。
宮舘の家に行くも良し。
…迷い所である。