一人咲く彼岸花と賢者の石【HP】 (ページ43)

今日:10 hit、昨日:44 hit、合計:173,447 hit

43 ページ43

.

「…妖精の、呪文学は、順調か？」

少ししてスネイプが空気を打破しようと尋ねる。

『シレンシオ(黙れ)！』

Aは握りしめていた杖を傍にいたワタリガラスに向けて唱えた。

するとワタリガラスは先程までうるさいほどに鳴いていたのに嘴をパクパクさせるだけで声が出なかった。

「フッ、問題ないようだな。」

スネイプは少しだけ嫌味を込めて言う。

そして、近くに生えていた二葉を紡ぎ、Aの方に飛ばした。

『いい魔法。』

Aはその真っ直ぐにAの元へ飛んできた二葉を取ると小さく呟いた。

『…私には出来ない。』

Aはスネイプの方に送り返そうとするがやろうとすれば持っていた二葉が枯れてしまった。

「何も心配せずともいい。これがOWL(ふくろう)に出るなんて馬鹿げた話は無い。それに、」

と、スネイプはAに近づき、目の前にしゃがみこんで続ける。

「お前が出来ずとも私が出来る。人間、補い合えばよいのではないか？」

何を急に言っているんだ、この人は、とAは心のどこかで思ったが、それよりもそうスネイプが言ってくれたこと自体が嬉しかった。

「勿論、私に限定されたことではない。お前には友がいる。スリザリンの優秀な友が。彼らを頼れば良い。」

スネイプは自分が言ったことをかき消すかのようにそう急いで続けた。

『何焦ってるの。あなたが私に足りない部分を補ってくれるのなら、私は喜んであなたと補い合う。』

Aは何の恥じらいもなく言った。

本心だった。

五年もそばに居てくれて家族のように休暇中、食事を取ってくれたスネイプがそう言ってくれたことがとにかく嬉しかった。

自分でも何故あのような告白じみたことを言ったのか分からない。

闇の帝王を彷彿とさせる表情が減った代わりに、何となく彼女はあの女(ひと)に似てきた気がしてしまった。

A･アマリリスというあの女(ひと)を殺した者の娘をあの女(リリー)と重ねてしまった。

「そうか。」

スネイプは意外な返事にそれしか言えなかった。