おのれ狸：伍拾伍 ページ10
「…僕さ、他の刀剣が。清光が折れるところを何回も見たんだ。」
ぽつり、そう呟いたのは大和守安定だった。
彼は何かを思い出すように、天井の目を眺める。
「その時の事は良く覚えてないけど、あの人は…前任はさ、凄く笑ってた記憶がある。戦場で折れるんじゃなくて、親しい刀の前で、自分で意味もなく折って楽しんでた。それが本丸では当たり前で、でも沖田くんとは違ってて、なんか…悲しくて、胸がすごく痛かった。」
「…審神者という存在の知識は持ってる。でも、僕は沖田くんとあの男しか、主を知らない。わからないんだよ…」
「安定…」
大和守はぎゅっと自分の胸を握り締めた。しかし、顔を戻した彼を見て、加州は固まった。
彼は、こみ上げる感情を無理やり抑え込んでいるような奇妙な表情をしていた。そこまでは理解できる。
「…だけどさ、あんたにそんな事言われたら、断れないじゃん…！？」
しかし、赤い。大和守の顔は熟れた林檎のように、耳の先まで赤かった。
「うわっ、何その顔キモッ」
「うるさい！」
わっ、と限界を迎えた彼は恥じらって顔を覆う。
芥子はわけがわからなくて、頭の上にいくつもハテナマークを浮かべた。
どういうことか。そんなに自分はおかしなことを言ったのかと慌てて刀剣達の顔を伺う。
やはり駄目なのか？不躾すぎたか？
だが、眼鏡をかけてみれば気が付いた。同じような顔をしている者達が何人もいることに。
「ど、どうしたんです？皆さ」
「どうしたもないよ！」
どん、と燭台切が芥子の声を遮る勢いで床を殴る。その顔がまた、赤い。
「しょ、燭台切さん？？」
「あんな…あんな口説き文句言われたらついて行くしかないじゃないか…！」
芥子は完全に固まってしまった。最初はあんなにスパダリ全開だった燭台切が、今では恥じらう生娘の如く女の顔をしている。
加えて粟田口一派の多種多様な動揺の仕方よ。
乱は「きゃー！」と女子のようにはしゃぎ、厚は男泣き、秋田は瞳を輝かせて「主君！主君！」と言い続けている。
何 が あ っ た ！ ？
横の初期刀に助け舟を要請するべく視線を送れば、すっぱい顔をするばかり。
「陸奥守さん…」
「おんしは…しょうまっこと刀たらしぜよ」
「意味が分かりませんけど！？」
「わからんままでえい…」
ともかく、話を聞けばほとんどの者が芥子の刀剣となることを承諾したので、芥子は流して今後の刀解の刀やら夕飯に意識をやることにした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1160人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼(プロフ) - 某僕と契約して魔法少女になってよ！！な清光がいて爆笑しました。表紙も大好きです。好きです。 (11月13日 19時) (
レス) id: 2e07dff5be (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 表紙から爆笑でした。ありがとうございました。 (2021年1月29日 18時) (レス) id: 348703d198 (このIDを非表示/違反報告)
夏終朝凪(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです……!!テンポが良くてとっても読みやすかったです(*´▽｀*)続きが気になります(*ﾉωﾉ)気が向いたらで良いので、更新してくださると嬉しいです(о´∀`о)どうかお体に気を付けてお過ごしください。コメント失礼しましたm(_ _)m (2021年1月29日 17時) (レス) id: 8142368f1e (このIDを非表示/違反報告)
イケ(プロフ) - 面白いのにもったいない (2019年11月26日 18時) (レス) id: 85ff92ecab (このIDを非表示/違反報告)
レモン(プロフ) - はじめまして、すごく面白かったです！完結おめでとうございます！ (2018年11月15日 13時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ムカデ | 作成日時：2016年12月11日 23時
