おのれ狸：漆拾肆 ページ31
落下したように錯覚した身体が跳ねて、芥子は覚醒した。
芥子は呆けたように固まって、身体を起こした。
障子の紙を透かして朝の光が部屋を照らし、シュルっと軽い音を立てて身を包んでいたらしい朱い着物が畳に落ちる。
どうやら、愛する彼女の初期刀は既に部屋を出ているらしい。
「夢…」
夢にしては、とても現実味が強い夢だった。今でもあの、夜の冷たい風だったり薪の爆ぜる音だったりが本当のように感じられる。
それに、あの短刀
「…名前なんでしたっけ？」
黒髪の、儚げな容姿にはアンバランスな低い声。男気溢れる佇まい。それだけは覚えている。
乱れてしまった服の帯を解いて、ふと周りに目をやると数本の刀が散らばっていた。
昨日よりも何本か減っている気がする。
おもむろにその中の一本に触れようとしたとき、ガシャンと騒々しい劈くような破壊音が本丸中に響いた。
同時に雄叫びと悲鳴がこだまする。
「失礼致します、主君。お目覚めですか」
障子の外から前田の穏やかな声がした。一体何事かと尋ねると、苦笑を含んだ声が返ってくる。
「…実は、主君が昨日保護された黒本丸の刀剣が数振りほど顕現されまして。主君に危害を加える前にと陸奥守さんが隔離しましたが、それはそれは暴れて手がつけられません。まるで怯えたキツネリスのようです」
「まあ大変。すぐ行きます」
ただ、着ていたほとんどを脱いで下着姿になってしまったので普段は別の着物を着直すところを、急ぎのようだからとTシャツと短パンというラフな格好に済ました。
ちなみに、Tシャツにはデカデカと「おのれ狸」と達筆な筆文字があしらわれていて、廊下を移動中に目にした刀剣男子は二度見するはめになった。
さて、例の黒本丸刀剣男子だが問題の場所に近づいて来るにつれ騒がしさが増すようになった。
芥子は思わず耳を塞ぐ
そっと扉から部屋の様子を覗いたところ、そこには二振りの陸奥守吉行と石切丸、今剣、岩融が。そして彼らに押さえつけられた、長い白髪の見覚えのない美しい男が般若の形相で荒ぶっていた。
「おのれ離さんか！！」
「おちつきなさい こぎつねまる。おなじさんじょうのかたなといえど、あるじさまにてをだすようならようしゃしませんよ」
「ハッ、よく飼い慣らされたものですね今剣。そんなに今の主が気に入ったのですか…滑稽な」
「もうバンしてもええかの？」
「いいですよ」
「いや駄目で〜すよ」
芥子は慌ててタオルを投げた
終わり
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蒼(プロフ) - 某僕と契約して魔法少女になってよ！！な清光がいて爆笑しました。表紙も大好きです。好きです。 (11月13日 19時) (
レス) id: 2e07dff5be (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 表紙から爆笑でした。ありがとうございました。 (2021年1月29日 18時) (レス) id: 348703d198 (このIDを非表示/違反報告)
夏終朝凪(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです……!!テンポが良くてとっても読みやすかったです(*´▽｀*)続きが気になります(*ﾉωﾉ)気が向いたらで良いので、更新してくださると嬉しいです(о´∀`о)どうかお体に気を付けてお過ごしください。コメント失礼しましたm(_ _)m (2021年1月29日 17時) (レス) id: 8142368f1e (このIDを非表示/違反報告)
イケ(プロフ) - 面白いのにもったいない (2019年11月26日 18時) (レス) id: 85ff92ecab (このIDを非表示/違反報告)
レモン(プロフ) - はじめまして、すごく面白かったです！完結おめでとうございます！ (2018年11月15日 13時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ムカデ | 作成日時：2016年12月11日 23時
