おのれ狸：陸拾肆 ページ19
青年は名を「岸」といった。生まれは高い霊能力を持つ一族の出で、トップクラスの大学を主席で卒業した所謂エリート官僚だ。
しかし、彼自身はインテリっぽくない、いつも笑顔を絶やさぬ優男で、今もニコニコと笑みを浮かべて円卓に加わっている。
上層部の中でも一番若人で、有力視される人物であった。
彼は柔らかく微笑んで、優しく、はっきりと喋った。
「例の本丸…潰すのは時期尚早では？」
ざわりと会議室が揺れた。
「ほう？君はあの獄卒の味方をするのかね」
中年の男が苦々しげに顔を歪める。それでも、岸の飄々とした態度は揺るがない。
「いいえ。ただ、利用価値のあるものをみすみす捨ててしまうのは惜しいと思ったのですよ」
「利用価値？」
「ええ。まずはこれを見てください」
岸は端末を操作し、円卓の中心にデータを映し出した。
「これは、各過剰使役、または不適切使用があった本丸の''引継ぎ後''のデータです。私はその全ての本丸の情報を集め、研究してみました。すると、ある気になる事がありましてね」
映し出されたデータが切り替わり、新しい画像とグラフが表示された。
すると、会場にどよめきが起きた。
「これは、同じ練度。同じ銘の刀剣男士の例です。皆様もご存知の通り、彼らには個体差というものが付いてきます。『亜種』とも言いますね。それは特に個々の強さにも影響して、戦況を大いに作用するのです。」
「そして、その個体差を生み出す原因となるのは、彼らの過ごす環境と、審神者。ここまで言えば、もうお分かりですね？」
ゴクリ、と誰かが喉を鳴らす音が聞こえた。いつの間にかざわめきは静まり、彼の一言一言にその場の全員が注目している。
青年は細めていた目をすっと開いて、その眼光を鈍く光らせた。
「毒をもって毒を制す…皆さん、もっとプラスに考えましょう？彼らは…彼女らは、確かに問題がある者達ばかりかもしれない。だけど、うまく扱えれば利益を落としていってくれる筈ですよ？」
それに、この子も───
通信が切れた一室。そこで、彼は印刷された白髪の少女の写真を高く掲げた。
彼は先ほどとは違う、恍惚とした満足気な表情で笑うと、その写真の彼女にそっと唇を当てた。
本当に、心の底からの笑顔であった。
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蒼(プロフ) - 某僕と契約して魔法少女になってよ！！な清光がいて爆笑しました。表紙も大好きです。好きです。 (11月13日 19時) (
レス) id: 2e07dff5be (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 表紙から爆笑でした。ありがとうございました。 (2021年1月29日 18時) (レス) id: 348703d198 (このIDを非表示/違反報告)
夏終朝凪(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです……!!テンポが良くてとっても読みやすかったです(*´▽｀*)続きが気になります(*ﾉωﾉ)気が向いたらで良いので、更新してくださると嬉しいです(о´∀`о)どうかお体に気を付けてお過ごしください。コメント失礼しましたm(_ _)m (2021年1月29日 17時) (レス) id: 8142368f1e (このIDを非表示/違反報告)
イケ(プロフ) - 面白いのにもったいない (2019年11月26日 18時) (レス) id: 85ff92ecab (このIDを非表示/違反報告)
レモン(プロフ) - はじめまして、すごく面白かったです！完結おめでとうございます！ (2018年11月15日 13時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ムカデ | 作成日時：2016年12月11日 23時
