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俺が今ここで思考を張り巡らせようと、解答は得られない
得られるのは、膨大な憶測だけだ
「流石の灰くんでも驚いてるかな?まぁあまりに突拍子もないことだからね」
仕方がないだろう、と言う師匠
それから師匠が話をしたのは、目の前で起こっていることのカラクリだ
師匠が言うには、目の前にいる人物ーーー彼女の先生は、今この時このために用意された存在だという
この時のために物語に組み込まれた人物であり、相応の役目がある…
役目を終えれば世界の1部となる『プログラム』にすぎない…と
師匠の口振りは、まるで先生が人ではないとでも言っているようだった
人ではないとういうのなら、今俺の目の前にいる人物は一体何だろう
用意された存在とか、プログラムだとか言われても納得がいかない
精巧なAI?自立思考型の人型ロボット?
それもピンと来ない
目の前の人物はどう見たって俺と同じ生き物だ
事実がどうであれ、俺の思考は目の前の人物を人間として認識している
まるでそう
「あ、そうだ。あの子のこと大切にしてね。私の大事な作品だ」
『……あの子?』
聞いたところで返答は得られない
分かっているけど、思わず口をついて出てしまった
脳裏をよぎった可能性を信じたくないからかもしれない
まさかそんなわけないと、否定したいのかもしれない
ドクドクと心臓が脈打ち
息を飲んで次の言葉を待つ
そんな俺を楽しむように、師匠はたっぷり間をとった
いや、実際は “あの子” とやらに思いを馳せていたのかもしれない
俺のために用意したのだと言う師匠の言葉は、研究結果を誇る学者のようにも聞こえた
「あの子は、灰くんの良き友となり、良き理解者になる。あの子もまた、灰くんに劣らない天才だ。その名を冠するに相応しい人格を構成し設定した。もう知ってるだろうけど、名前はA。…私からの贈り物だよ」
穏やかな声で紡がれた言葉
師匠に悪意なんて一切ない
ただ事実を述べているだけ
わかっているからこそ、この胸のざわめきが収まらない
師匠の作品
人格の構成、設定………
彼女もまた………純粋な人間ではなく仮想の存在なのだ
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