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「いただきます」



いつもそうしているのか、彼女はそう言って律儀に手を合わせた

彼女が食べているのは、たらこスパゲッティだ

それもゆでたての麺に粉チーズをかけ、更にタバスコをこれでもかとかけたやつ

どれほど辛くなっているかはわからないけど、彼女は普通に食べていた



『辛いの好きなの?』



ペロリと平らげた彼女にそう聞いてみると、首を傾げられた

それから数秒、彼女は視線を彷徨わせ、最後に俺を見た




「この前も言いましたが、私に好きか嫌いかの質問をしても 意味がありませんよ」


『答えは変わらないって言ってたよね。どうして?』


「どうして? …単純にわからないからです。好きだとか嫌いだとか…」



自分には難しいのだと、彼女は話した


彼女の口ぶりは軽いもので、大して気にしていないように感じた

生きている以上、多少の好き嫌いは感じるだろうと思ったが,、

それを聞いたところで、彼女は愛想笑いを浮かべるだけだろう

聞かないでくれ、とでも言うように…


俺は別に、彼女に嫌われたいわけじゃない

どちらかというと好意的でありたいし、あってほしい

気にはなるが、深入りしてまで知る必要もないだろう



昼食を食べ終わると、彼女は食堂を出た

勿論俺も彼女についていく

向かった先は、研究室と表札の出された部屋だった

学生証で部屋のロックを解除していたけど…俺も入っていいのだろうか

出入り口で少し戸惑っていると、彼女がどうぞ。と向かい入れてくれた


10畳ほどの小部屋には机がいくつか並んでいて、どこか学校の職員室を彷彿とさせた

異なる点を挙げるとすると、職員室の机よりも整頓されている点だろうか

いや…整頓されているわけじゃなくて、利用者がいないだけ…か

見た感じこの研究室を使っているのは、彼女とあと1人だけらしい



「黛さん」



自席に座った彼女は俺にそう声をかけた

隣の椅子を引き出しているから、そこに座ってと言いたいらしい



「この部屋、私と先生くらいしか出入りしないので内緒話にはちょうどいいんです」


『俺が入ってもよかったの?』


「むしろこの時のために用意された部屋です」


『…どういうこと?』



引っ掛かる言い方に聞き返してみたが、彼女はきょとんとした顔をしていた

挙句には「何がですか?」と逆に聞いてくる

たった今、自分が言ったことを覚えていないのだろうか…

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作者名:エバ。 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年3月31日 20時

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