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「マチさん、これは一体?」
「ショッピングよ、ショッピング。服を買うの。どうせアンタこういうのして来なかったでしょ」
「…お察しの通りですけど。」
次から次へと服を当てられ、少女は10分と経たずもう疲れた顔をした。得意じゃないんだ、こういうの。
「ほらもう嫌な顔しない。綺麗な顔してるんだから」
「綺麗な顔なんて初めて言われましたよ。」
「アンタの周り、碌な男居ないのね。」
碌でもない男なんて一人しか…いや、二人、いや?四人くらいは居たな。
「いい?アンタは強い。けど、武力だけが強さじゃない。」
「綺麗なだけでひれ伏す男なんて五万といる。綺麗な女は強いの。」
「それは実体験で?」
「どうだろうね。」
はぐらかされてしまった。くるくるの変わる衣服を前に、少女は鼻で息を吐いて「もうこの強い美女のお好きにしてください」と思った。
(あ、マチさんの言ってる事ってこういう事か)
当たらずとも遠からずである。
「はい、じゃあコレとコレとあとコレ。試着して来て」
「はーい」
気だるげに少女は試着室へ向かう。
その様子をマチは後ろから眺めていた。
「妹さんですか?」
「…いや、知り合いの子。」
にこにこと愛想の良い笑顔の店員に話しかけられる。マチは無愛想な返事しか出来なかった。
少女の見た目は実に中性的だ。男共をのした時は少年に間違われ、ブティックに入れば少女に見られる。
(…妹ね)
確かに傍から見ればそう見えるのかもしれない。なんだって私はただの子どもをこんなに気にかけているのだろうか。…ただの子ども、ではないか。
「ね、もう着替えた?」
「わ、ちょ」
マチは自分しか見えぬよう少しだけカーテンを開けた。愛らしい服に身を包んだ少女を早く見たかったのだ。
…そう思っていたのに
「…アンタ、それ」
「あの、マチさん?閉めて貰っていいですか」
「その傷、火傷も」
「あぁー!それですね!後で説明するんでとりあえず待ってもらって良いですか!?」
そう言いながら少女は耳を赤くしてカーテンをシャッと閉めた。普通に初対面相手に上半身裸を晒すのは恥ずかしい。
しかしマチにとってそんな事はどうでも良かった。
(…なに、あの背中)
あれは10歳そこらの子どもが背負っていい物じゃない。
抉られ、斬られ、焼かれ、撃たれ、爛れた肉。
傷つけられても、まともな手当をされていたらもう少しはマシだった筈なのに。それさえも
(…ホント)
(ろくな奴じゃ無い…!)
マチは歯を食いしばった
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かぴばら2(プロフ) - mzさん» ワー!!!コメントありがとうございます!シリアスな時はとことん暗く、その分ほのぼの回ではゆるっゆるに書かせて貰ってます!!!長い事書いてるのにまだゴン達の夏休みは来てません…!!更新がんばります! (2021年7月22日 21時) (レス) id: a02d4950c9 (このIDを非表示/違反報告)
mz(プロフ) - 1作目から途中までですが、一気に見させていただきました!シリアスな場面の緊張感や主人公達のほのぼのとしたやりとりのギャップが凄すぎて、圧巻でした…。ゆっくりと、むふふとしながら楽しませて頂きます…!! (2021年7月22日 2時) (レス) id: 77bee458f3 (このIDを非表示/違反報告)
かぴばら2(プロフ) - 有希さん» この作品に触発されて…!!?ヤバいっすね…ニヤニヤするぐらい嬉しいです。ぶっちゃけハンタ作品は鬼を滅する!!とか呪いと戦う!!とかより全然供給少ないので、こうして触発されて書いてくれる方が居るのがすごく嬉しいです!コメントありがとうございます! (2021年2月20日 14時) (レス) id: a02d4950c9 (このIDを非表示/違反報告)
かぴばら2(プロフ) - 有希さん» 戦闘描写ってめっっっっちゃ難しいですよね!!?夢主ちゃんには超近距離でボコボコにしてボコボコにされて欲しいです…(歪んだ愛)鼻血が似合う主人公を目指してます。師弟対決私も早く見たいです() (2021年2月20日 13時) (レス) id: a02d4950c9 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 連続コメ失礼します!戦闘描写が大好きです。戦闘シーンまで読み込んだ作品は初めて。夢主ちゃんの超近距離な戦い方が性癖に刺さって抜けません。超絶私事ですが、かぴばらさんの作品に触発されてハンタ作品を書き始めました。師弟対決をお待ちしてます(コソッ (2021年2月19日 18時) (レス) id: e15740c466 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かぴばら | 作成日時:2020年12月6日 10時