私は師匠を信じない【HUNTER × HUNTER】

・ ページ26

試合開始と同時にジョッパーは動いた。包帯をいち早く解き、中に入っていた人型の傀儡から無数の針が発射される。

(包帯の中から出てきたのはダボったい格好をした傀儡。どんな仕掛けがあるのかわからない仕組みか。)

少女は冷静に分析しながら針をひょいと躱す。

(…にしてもあの傀儡、なんか違和感あるんだよな)

ボロ布で全身覆われ、傀儡本体の大きさもイマイチわからない。大まかに人型であることは分かるが、それだけだ。外見からはその情報しか得られない。

そして少女の目にジョッパーが傀儡を動かしている様子は映らなかった。…イルミと同じように何かを刺して動かしているなら別だが。

生物と静物、どちらの方が念で扱い易いのか。それは各々の能力によるだろう。ジョッパーは傀儡に思い入れが深いからノーモーションでも操作が可能なのか。

…と決め付けるには早計。

(まあいい。本体を叩けば傀儡は止まる。)

ジョッパーの前をひらひら動く傀儡を躱し、本体目掛けて蹴りを入れる。…しかし、

「っ！はは！意外と丈夫だな！顔面キックで吹っ飛んだ時よりやるじゃん！」
「顔面キックをくらったのは弟の方だ…！」

容易く受け止められてしまう。少女にとっては嬉しい誤算だ。

まだ楽しめるじゃん、コイツ。蹴りを受け止められて笑っている少女にジョッパーは顔を歪ませた。

(っクゥ〜！！！右腕イッテェ！！！)

ホントにガキの蹴りか！？ジョッパーはじんじんと痺れる右腕を振るう。そして負けじと少女に殴りかかった。

少女は拳をはたき落とすが、攻撃はしない。様子見のつもりだろうか。

だが、都合が良い。精々俺を舐めてろクソガキが！

ジョッパーは攻撃の手を休めることなく、己の傀儡に目配せ(・・・)し『やれ』と指示を出す。

傀儡から出てきたのは一本のワイヤー。攻撃を受け続ける少女の首を囲う様にワイヤーは飛んでいき、一気に締め上げる。

ビシャリ、と少女の首から血液が飛び散った。

少女との距離が離れたジョッパーは息を荒らげながら、悔しそうな顔をした。クソ、首を派手に撥ね飛ばしてやるつもりだったのに！

ジョッパーの目の前には指(・)から出血する少女の姿。喉に触れる直前、少女は己の指を挟んで緩衝材としたのだ。そして指にワイヤーが食いこんだ瞬間、執念深い星(ヘイトイーター)を発動させワイヤーを切り刻んだ。

バッサリと切れたワイヤーをじっと見てから、こちらを指さし少女は言う。

「…わかったぞ。お前の能力」

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す