私は師匠を信じない【HUNTER × HUNTER】

・ ページ43

「待っておくれ、君と話が」
「アンタと話す事なんてない。精々無様に負けてろ」
「…手厳しいな」

カストロの言葉に振り返る事無くずんずんと歩く少女。

…最終試験の時にイルミと対峙した時とは少し違う。でも確実にマジギレしている。キルアは何となくソレを悟った。

＊

「…ごめん。強く握り過ぎた。」
「いや別に、こんぐらい観戦中に治るから良いけど。」

キルアは少し腕をさすって袖をおろした。そして疑問をぶつける。

「カストロとなんかあったのか？」
「…アイツ、二年前会った時からずっと嫌いだ。」

ギュッと少女の眉間に皺が寄る。

「私の境遇を勝手に想像して、可哀想だとか、師匠が変わればもっと優秀に育つとか、散々言ってくるんだ。」
「そりゃ、まあ、世間一般で言えば私は可哀想なのかもしれない。それはカストロ以外にも色んな人から言われた。」
「でも皆は受け入れてくれた。師匠に育てられてここまで強くなった私の事を、ちゃんと。」

「だけどアイツは違う。私の今までの経験全部否定して、変わるように強要してくるんだ。こうするべきだ、傷をつけちゃいけない、あんな野蛮な男の傍に居るべきでない。」

そこまで言って「チッ」と大きな舌打ちをする。

「何よりも偉そうに振舞ってるのが腹立つ。自分が私の師匠になれると思ってる所も嫌い。自分が師匠と対等に渡り合えるとか勘違いも甚だしい。」
(…？こいつヒソカの事大好きなの？)

まるでヒソカの信者の様な事を言う。実際少女はヒソカの『強さ』に対しては、盲信的になるまで絶対であると信じている『信者』である。

「…私は、『女の子だから』から始まる言葉が大っ嫌いなんだけど、アイツはソレを最悪まで極めたカンジ。だから反吐が出るくらい嫌い。」

そう言ってんべぇと舌を出す。…端的に言えば、『生理的に無理』というやつなのだろう。

「…なるほどね。で、実際アイツどのくらい強いんだよ。」
「師匠より断然弱い。」
「じゃあお前となら？」
「………」

「…私より、ちょっと弱い。」

「…ソーデスカ。」

目の前の苦虫を噛み潰したような表情から察するに、少女の言葉は嘘だ。

(『私よりちょっと強い』…ってのが本音か。)

これは面白くなりそうだ。不機嫌な少女の隣でキルアは鼻歌を歌い始めた。

この小説の続きへ→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す