scene283 ページ33
「それどころか、続けられるかどうかもわからないけどね」
救急箱から取り出した軟膏を傷に塗りながら、野坂は続ける。
「そもそもAちゃんが、アイドルを続けたいと思っているかどうかも、わからない。今回の件は、アイドルをやめるつもりだったんじゃないのかな」
薬特有の臭いが鼻を抜けていく。
確かに、Aの意志はわからない。でもおれは、Aはここでやめるべきではない気がしていた。
「スポンサーも見つかっていないし……テレビにはしばらく出られないだろうね」
「……そうだな」
どうして、Aの為になにかしたいと思うんだろう。どうして、Aが好きなんだろう。
あんなことを聞かされた後も、変わらず。
本性を見せられて、正直少しびびってたけど、残ったのは、そんな自分が心底情けないという思いだけだった。
どんなお前でも受け止める、なんて、かっこつけていたのに。
Aは見せたくなかったんだ。それなのに、Aの為のふりして、おれは自分の気持ちを押し付けてしまっていたんじゃないか。
「昨日、なにかあった？」
「え……」
急に顔を覗き込まれて、どきりとする。
「別に……」
咄嗟に誤魔化そうとしてしまう。別に話してもいいはずなのに。
こんな下手な取り繕い方、野坂には一瞬でばれてしまうだろう。でも野坂はそれ以上詮索して来なかった。
「ねえ、ヒロトくん、いいことを教えてあげようか」
唐突にそんなことを言い出した。
「……なんだよ」
「いや、そうだね。やっぱり実際に見た方がいいか」
「だから、なにが」
野坂はがっちりとおれの手を掴んだ。
「行くよ、雷門中に」
・
つい数日前、見たばかりの景色だ。でも、昼間に来るのは、もしかして初めてなんじゃないか。
野坂に引っ張られて校門をくぐると、校庭に人の姿があった。
勝手に入っていいのだろうか、そんな心配をよそに、野坂はおれの手を引いてぐんぐん進む。
「おい……！ いいのかよ！」
「大丈夫、ぼくも前にこうして勝手に入ったことあるから」
「マジかお前……」
なんかそんな気もしたけど。日本全国お前の庭みたいなもんだもんな、たぶん、知らねえけど。
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ペナ紅 - やっぱ電話の相手、半田だったんだ…！ (2021年7月5日 16時) (
レス) id: 173b2b90f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのわたし(プロフ) - 完結おめでとうございます。高い文章力ですごく引き込まれました。私事ではありますがわたしは基山ヒロトが好きで吉良ヒロトがどうしても好きになれずこの小説を取っ掛りとして読ませていただきました。あなたの作品で彼のことを好きになれました。 (2020年12月8日 18時) (レス) id: 0a912f5e29 (このIDを非表示/違反報告)
りと - 完結おめでとうございます！丁寧かつ読みやすく想像しやすい文章でサクサク楽しく拝見できました！個人的には甘くない終わりにくそぅ！と思いつつでも現実だったらそうだよなぁとしみじみ受け止めました。笑 また是非に文字を書き続けてください！応援しております！ (2020年11月22日 15時) (レス) id: 4c41bf9741 (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - とっても楽しく読めました！大好きな作品です！完結おめでとうございました！ (2020年3月17日 10時) (レス) id: 40379c818e (このIDを非表示/違反報告)
鬼跡 - 完結おめでとうございます⊂((・x・))⊃この作品本当に大好きでした！！！！大好きです！ヾ(＠⌒ー⌒＠)ノ (2019年12月18日 18時) (レス) id: 8e87660fcc (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2019年8月22日 20時
