scene275 ページ25
「なんか……思い出すな、雷門中の廊下」
ぽつりとつぶやかれた言葉に、心臓が跳ねる。
まさか同じことを考えていたのか……？
「……あのときは一人だったけど」
おれはなんとか首だけをAの方に向ける。
凍り付いた顔を見て、Aは笑う。
「そんなに深刻に考えないでよ。もう過ぎたことなんだから」
Aは膝に顎を乗せ、目を閉じた。
「あのときの自分は……今考えても不思議なの。飛び降りるなんて、今の私だったらできない」
その言葉を聞いて、少し安心する。エイリア石の力に呑まれ、あのときのAは正気じゃなかったんだ。
「私は……こっちの世界にいた、私に全てを託してくれた私のことを裏切ってしまった。それがきっと引き金になったんだ。後悔の隙間に入り込んで、エイリア石が私をあの場所まで連れて行った」
あの日のAの姿を思い出した。血だまりの上に横たわる、Aの姿だ。
「……裏切ったっていうのは？」
「私は、もうすぐ死んでしまう私から、この世界を託されたの。こっちの私は病気で長く生きられないから、私の代わりに、みんなが世界一になる瞬間を見届けて欲しいって」
それで、Aはもう一人の自分と入れ替わったのか。
この世を去る自分の為に、Aが何より望んだ、見届けられなかった未来を見る為に。
「違う世界で生きることを決めるなんて……相当な覚悟だったんだな」
今まで生きて来た世界を捨てるなんて。元いた世界で入れ替わったAが死んでしまったら、戻ることもできなくなる。
Aは静かに首を振る。
「こっちの私は本当に純粋な子だったけど、私は違った。……都合がいいとさえ思ったんだ」
背筋がぞくりとした。
「それって、どういう……」
Aは顔を上げる。どこか遠くを見つめるような目で言った。
「私は向こうの世界に絶望していたの。だから、入れ替わることも満更でもなかった」
冷たい汗が背中を伝っていった。
「絶望って……」
Aは小さく微笑む。そして、静かに語り始めた。
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ペナ紅 - やっぱ電話の相手、半田だったんだ…！ (2021年7月5日 16時) (
レス) id: 173b2b90f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのわたし(プロフ) - 完結おめでとうございます。高い文章力ですごく引き込まれました。私事ではありますがわたしは基山ヒロトが好きで吉良ヒロトがどうしても好きになれずこの小説を取っ掛りとして読ませていただきました。あなたの作品で彼のことを好きになれました。 (2020年12月8日 18時) (レス) id: 0a912f5e29 (このIDを非表示/違反報告)
りと - 完結おめでとうございます！丁寧かつ読みやすく想像しやすい文章でサクサク楽しく拝見できました！個人的には甘くない終わりにくそぅ！と思いつつでも現実だったらそうだよなぁとしみじみ受け止めました。笑 また是非に文字を書き続けてください！応援しております！ (2020年11月22日 15時) (レス) id: 4c41bf9741 (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - とっても楽しく読めました！大好きな作品です！完結おめでとうございました！ (2020年3月17日 10時) (レス) id: 40379c818e (このIDを非表示/違反報告)
鬼跡 - 完結おめでとうございます⊂((・x・))⊃この作品本当に大好きでした！！！！大好きです！ヾ(＠⌒ー⌒＠)ノ (2019年12月18日 18時) (レス) id: 8e87660fcc (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2019年8月22日 20時
