scene265 ページ15
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目を開けると、薄暗い部屋の天井が目に入る。
おれ……今なにしてたんだっけ？
体を起こして部屋の中を見回す。見覚えのない簡素な部屋。置いてあるのは、おれが寝ていた硬いパイプベッドと事務机と椅子だけだった。どれも古びていて、所々へこんだり塗装が剥げたりしている。
「って……」
急に痛みを感じて頭を押さえる。頭の中の血管がどくどくと脈打つ感覚。
がちゃりと音がして部屋のドアが開く。
目が合ったそいつはドアノブに手をかけたまま固まった。
しばらくおれを見つめた後、目を逸らして、それからわずかに微笑む。
「よかった……目が覚めたんだね」
その顔を見て、おれは心臓のあたりがぎゅっとなった。
「A……」
その名前を口にした途端、不思議と力が抜けた。ベッドから立ち上がろうとして、そのまま前のめりに倒れそうになる。
「ヒロト……っ」
咄嗟にAが支えてくれる。おれはAの手を借りながらベッドに座った。
「……悪い」
ベッドについた手の下に硬い感触。見ると、紫色の石が転がっていた。
Aはおれの側に立ったままこちらを見つめる。
唇をきゅっと引き結んで、薄暗い部屋なのに、眩しそうに目を細めている。
今ならわかる、Aがどうして飛び降りたのか。
おれが感じた失意こそ、その理由だ。
「……元気か」
おれの口から出たのは、そんな言葉だった。
「……うん」
Aは小さく頷いた。
「そうか……」
ようやく少し安堵する。
言いたいこととか考えていた訳じゃないけど、顔を見たらなんかどうでもよくなってきた。
元気なら、それでいい。影が差した表情は、元気なようには見えなかったけど。とにかく今ここにいてくれるんだ。今はそれで十分だ。
「ごめん……私、ヒロトがこんなことになると思ってなくて……」
突然、Aはぽろぽろと涙を零す。
「え……」
予期せぬ出来事に、おれはぎょっとする。
「ごめん……ヒロト……」
「ちょっ……ま、待て、一旦落ち着け」
手を伸ばしても、ベッドから立ち上がることができず、おれの手は虚空を揺れる。
その時、再び部屋のドアが開かれる。
Aを挟んで、そいつと視線が合う。どこかへ行っていたのだろうか、野坂が戻ってきた。
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ペナ紅 - やっぱ電話の相手、半田だったんだ…！ (2021年7月5日 16時) (
レス) id: 173b2b90f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのわたし(プロフ) - 完結おめでとうございます。高い文章力ですごく引き込まれました。私事ではありますがわたしは基山ヒロトが好きで吉良ヒロトがどうしても好きになれずこの小説を取っ掛りとして読ませていただきました。あなたの作品で彼のことを好きになれました。 (2020年12月8日 18時) (レス) id: 0a912f5e29 (このIDを非表示/違反報告)
りと - 完結おめでとうございます！丁寧かつ読みやすく想像しやすい文章でサクサク楽しく拝見できました！個人的には甘くない終わりにくそぅ！と思いつつでも現実だったらそうだよなぁとしみじみ受け止めました。笑 また是非に文字を書き続けてください！応援しております！ (2020年11月22日 15時) (レス) id: 4c41bf9741 (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - とっても楽しく読めました！大好きな作品です！完結おめでとうございました！ (2020年3月17日 10時) (レス) id: 40379c818e (このIDを非表示/違反報告)
鬼跡 - 完結おめでとうございます⊂((・x・))⊃この作品本当に大好きでした！！！！大好きです！ヾ(＠⌒ー⌒＠)ノ (2019年12月18日 18時) (レス) id: 8e87660fcc (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2019年8月22日 20時
