scene263 ページ13
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子どもの頃のことを思い出した。
広い部屋にひとりきり、例えようもない孤独は、幼いおれにはひどく辛かった。
急に場面は真っ暗な空間に変わる。そこは、おれを蔑むいくつもの目に囲まれていた。
おれは、だれにも期待されていない。
また場面が変わる。そこには、父さんと話をする、タツヤの姿があった。
おれは二人を遠くから見ているだけ。
壁に向かって蹴ったボールが跳ね返って戻ってくる。
今日も父さんは試合を見に来てくれなかった。
壁に蹴ったボールが跳ね返って、大きな音をたてて壺を割った。
父さんに愛されたかった。タツヤみたいに。
おれがもっと強かったら、父さんは愛してくれただろうか。
あの頃、この力を手にしていたら、おれはどうしていただろう。
この力に縋っていただろうか。
おれはそのとき、学校の屋上にいた。なぜかフェンスの向こうに、朝焼けに包まれたAがいる。
「私ね、ヒロトのことが好きだよ」
Aは柔らかく微笑む。こんな顔、久しぶりに見た気がする。
なんだろう、これは、おれは夢を見ているのだろうか。
おれはAの方に手を伸ばす。フェンスをすり抜けた手が、Aの肩に触れた。
「A……おれは……」
これが夢なら、すべて打ち明けてしまおう。どうせ、消えてなくなるんだから。
「お前が好きだ」
口にした言葉は、燃えるような赤い空に溶けていく。
ああ――もっと早く言っておけばよかった。こんな風に、夢に見るくらいなら。
おれはAの顔を見ようとした。でも、白いもやのようなものがかかって、表情が見えない。
「ほんとうに？」
いつの間にか朝焼けは消えて、おれたちは暗闇の中にいる。
Aは寂しそうな目でおれを見ていた。
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ペナ紅 - やっぱ電話の相手、半田だったんだ…！ (2021年7月5日 16時) (
レス) id: 173b2b90f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのわたし(プロフ) - 完結おめでとうございます。高い文章力ですごく引き込まれました。私事ではありますがわたしは基山ヒロトが好きで吉良ヒロトがどうしても好きになれずこの小説を取っ掛りとして読ませていただきました。あなたの作品で彼のことを好きになれました。 (2020年12月8日 18時) (レス) id: 0a912f5e29 (このIDを非表示/違反報告)
りと - 完結おめでとうございます！丁寧かつ読みやすく想像しやすい文章でサクサク楽しく拝見できました！個人的には甘くない終わりにくそぅ！と思いつつでも現実だったらそうだよなぁとしみじみ受け止めました。笑 また是非に文字を書き続けてください！応援しております！ (2020年11月22日 15時) (レス) id: 4c41bf9741 (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - とっても楽しく読めました！大好きな作品です！完結おめでとうございました！ (2020年3月17日 10時) (レス) id: 40379c818e (このIDを非表示/違反報告)
鬼跡 - 完結おめでとうございます⊂((・x・))⊃この作品本当に大好きでした！！！！大好きです！ヾ(＠⌒ー⌒＠)ノ (2019年12月18日 18時) (レス) id: 8e87660fcc (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2019年8月22日 20時
