scene273 ページ23
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「じゃあ、ぼくはあっちの部屋で寝るから。なにかあったら言ってね」
「うん……おやすみなさい」
毛布をぎゅっと握りしめるAに、野坂は微笑みかける。
「おやすみ」
パタリとドアが閉められると、部屋の中に静けさが広がっていく。
部屋の中にAがもぞもぞと動く音だけが聞こえて、なんだか妙な気分になる。
「ヒロトも、おやすみ」
背中に投げかけられた声に、おれはどきりとする。
「……おやすみ」
壁に掛けられた時計がカチリと音を立てる。見ると、ちょうど十一時を示していた。
窓のブラインドを閉めているだけでは、街の明かりが差して、部屋の中は薄明るい。
・
事務所のスタッフとの話し合いは、数時間に及んだ。
そのほとんどは、今回のAの行動について、どういう動機があったのかということを追求することに費やされた。
まったく無駄な時間だったと思う。Aはほとんどなにも語らなかったし、そんなことを問い詰めてもなんの解決にもならない。
ツアーを開催できるかどうかも、まだ決まっていないらしい。
なんとかスポンサーを確保できないか、各所に打診中とのことだった。
話し合いのときのAのことを思い出す。そのときのAは、なんだかいつもと違って見えたんだ。
自分より何歳も年上の相手と、物怖じせずに話す様子は、おれとは違う世界で生きてきたことを象徴するみたいだった。
それはパラレルワールドじゃなくて、芸能界っていう、もう一つの異質な世界だ。おれの知らない世界でずっと生きてきたんだなって思うと、もっとAが遠く感じた。
・
今日はおれとAと野坂で、このビルに泊まることになった。
Aはしばらくここに留まることになる。事務所にも、事務所の寮にも報道陣が詰め掛けていて、今戻るのは得策ではないと判断されたからだ。
Aを一人にできないから、おれと野坂も、今日はここで寝る。
ベッドは隣の休憩室に一つしかない。他のフロアには、寝具の代わりになりそうなものはなかった。
ベッドは硬くて寝ずらいから、野坂が使うと言い出し、おれとAは応接室のソファで寝ることになった。
非常用の毛布にくるまる。おれは同じ部屋の中で小さく寝息をたてるAを気にしながら、深い眠りについた。
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ペナ紅 - やっぱ電話の相手、半田だったんだ…！ (2021年7月5日 16時) (
レス) id: 173b2b90f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのわたし(プロフ) - 完結おめでとうございます。高い文章力ですごく引き込まれました。私事ではありますがわたしは基山ヒロトが好きで吉良ヒロトがどうしても好きになれずこの小説を取っ掛りとして読ませていただきました。あなたの作品で彼のことを好きになれました。 (2020年12月8日 18時) (レス) id: 0a912f5e29 (このIDを非表示/違反報告)
りと - 完結おめでとうございます！丁寧かつ読みやすく想像しやすい文章でサクサク楽しく拝見できました！個人的には甘くない終わりにくそぅ！と思いつつでも現実だったらそうだよなぁとしみじみ受け止めました。笑 また是非に文字を書き続けてください！応援しております！ (2020年11月22日 15時) (レス) id: 4c41bf9741 (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - とっても楽しく読めました！大好きな作品です！完結おめでとうございました！ (2020年3月17日 10時) (レス) id: 40379c818e (このIDを非表示/違反報告)
鬼跡 - 完結おめでとうございます⊂((・x・))⊃この作品本当に大好きでした！！！！大好きです！ヾ(＠⌒ー⌒＠)ノ (2019年12月18日 18時) (レス) id: 8e87660fcc (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2019年8月22日 20時
